「おーい！」

　…はぁ

　今日もか。

　おいゴン太。

　お前のご主人を起こしてこい。

　その鋭利な爪で顔面を引っ掻いてだな…

　「起きてる起きてる」

　「起きてる起きてるやないやろ！何時やと思っとんや？」

　ったく、世話の焼ける。

　あんたのせいでここ最近ずっとバタバタしてるんだけど？

　これからシャワー浴びるとか言い出すなよ？

　大体寝癖なんていっつもついてんだから気にすんな。

　朝メシだって準備しながらでも食えるんだから。

　「おはようちーちゃん」

　「おっはよ！」

　おばさんはこれから出るみたいだ。

　見慣れた『ヤマハ　Ｒ１ｰZ』。

　タワーの足場のような見た目のトラスフレームは、遠目からでも中々の存在感だ。

　煙と一緒に噴き出る2ストロークサウンド。

　右側２本出しのマフラーと、カーボン製のサイレンサー。

　車体のフレームと同じく、スイングアームもスチール製でかっこいい。

　おばさんはいつもこれに乗って職場に出かける。

　グレーのシートに跨り、サイドスタンドを蹴って。