「えー、教科書75ページを開いてください」
教室の窓から見える景色は、いつも綺麗だ。
神戸市内の街並みがよく見える。
神戸新聞社のツインタワービルと、阪神高速線のジャンクション。
高校に入ってから、少し感じるようになった。
時間が経つのが早いなって、授業のチャイムを聞きながら。
昔はそんなことなかった。
目標に向かって走れるのが、バカみたいに楽しかった。
西中の校舎からいつも見てた。
海岸線の湾曲と、街の上を走る環状線を。
えーっと、75ページね。
なになに、溶液と水溶液の性質ゥ??
なんじゃそりゃ
絶対難しいじゃん…
ハァ…
やる気が出ないなぁ…
◇◇◇
練習試合に向けて、試したいことがあった。
中学の時みたいにストレートだけじゃ通用しない。
元々カーブは投げれたけど、もっと投球に幅をつけなきゃダメだ。
バッターを討ち取るには緩急が必須。
ようはタイミングを崩せって話で、もう少しバリエーションを増やしていかないと話になんない。
「チェンジアップ?」
「うん。どう思う?」
ポール間走中にコウに聞いた。
もし球種を増やすとしたら何がいいかなって。
真面目な話、高校生でチェンジアップを使ってるピッチャーは少ない。
今のプロ野球選手でも、チェンジアップを使うピッチャーは少なくなってきてる。
フォークとかスプリットとかが主流になってきてて、ツーシームとかも流行ってきてるかな?
これから先上のレベルに行こうとするんだったら、他のピッチャーにはない独自の球を磨く必要があると思った。
とくに私なんかは、真っ向から勝負なんて、だんだん難しくなってきてるワケだし。
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