雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第229話

公開日時: 2023年6月14日(水) 23:31
文字数:672


 隣にあったはずのものがない。


 祐輔の下手くそな壁の落書きも、岡っちの穴の開いたスパイクも。


 部室のすぐ目の前に鉄棒があって、ツバサはよくそこにもたれかかってた。


 隣に大きい樫の木があって、涼むのにはちょうどいいんだ。


 俺もよく涼みにいってた。


 夏休みの日中は、やばいくらい暑かったから…


 日陰で涼まないとやってられなかった。


 スポドリをがぶ飲みして、汗で濡れたシャツを棒にかけて。



 俺たちはよく駄弁ってた。


 日によっちゃ、キャッチボールもせずに夜まで過ごしたり。


 早めに切り上げて、よく健太ん家に遊びにいってたりもした。


 アイツん家は山の方にあるんだけど、敷地は広いし、テレビゲームは充実してるし、見晴らしもよくて最高なんだ。


 見晴らしの良さだけで言やぁ、俺ん家も負けてない。


 だけどウチは、ちょっと歩かないと海が見えなかったりするから、若干惜しいんだよな。


 その点健太の家は部屋から街を一望できる。


 明石海峡大橋だって見える。


 坂道を少し登ったところにあるおかげで、ロケーションがまじでいい。


 健太のかーちゃんもすげぇ気前がいいってことで、いつの間にか皆で遊びに行くようになったんだ。


 コンビニも近いしな。



 野球部を立ち上げた時、部室はどうするかって話し合ってた。


 校長先生に直談判するためのスピーチの練習をしたり、片っ端から部員を募集しようぜって話し合ったり。


 入学した頃の景色が、部室の前にはあった。


 あの頃はとくになにも考えてなかった。


 …まあ、言っても今もだけど、当時は後先のことなんて考えずに、皆で無駄に盛り上がってた。


 野球やろうぜ!って、ルールもわからんやつが4人もいるのに。


 

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