「商業区!?」
「そうや。まだまだ構想中やけどな」
「そんなもんが必要なんか…?」
「“商業”って言うても、通貨は使用せんけど」
「どゆこと!?」
「災害が起こった後の世界で、お金なんて必要ない。必要なのは資源と、それを利用できる環境や。何人生き残れるかは別として、人が暮らしていける生活のサイクルが必要になる。食料に水。服装品。電気なんかのエネルギーもそうやな。とにかく、そういった“場”を形成する必要があるんや」
「地下に…?」
「地上では、人は住めんくなる。せやからこの場所がある」
「住めんくなる…?いつから…?」
「まだまだ先の話や」
「先って…」
「想像できんか?」
「そりゃ、まあ」
「でも目の前にあるやろ?この「場所」が。こんな大掛かりな施設が、ただの“地下”として存在しとるとでも?」
「言っとることはわかるけど、地下で暮らすつもりなんか!?」
「そうやで?」
「えぇ…」
「不思議か?」
「…そりゃそうやろ」
「まだまだ、課題は山積みや。よぉ見とき?いずれ暮らすことになるかもしれんで?」
フロアの中央には、巨大な柱が天井まで繋がっていた。
柱の直径はゆうに30mは超えている。
まるで港の工場にある、円筒型の貯蔵タンクみたいだった。
表面は金属っぽい硬い素材で出来ており、壁には階段が取り付けられていた。
柱にしては大げさだった。
こんなに太い必要があるのか…?
下手したら、ポートタワーよりもでかいんじゃ…
「これは柱とちゃうで?まあ、天井を支える役割も担っとるが、重要なのはそこやない」
「柱ちゃうの?」
「あの柱は海と繋がっとる。“海水“が入っとるんや。要するに「配管」やな。役割としては」
「配管!?デカくね??」
「海水を濾過する装置と繋がっとる。それから、『海洋温度差発電』っていう仕組みを利用して、発電ができるようになっとる。発電方法は他にもあるが、地下都市のライフラインを確立するために建造されたんや」
「水力発電…ってこと?」
「そうそう。深海1000mの海水を汲み上げるプロジェクトも進行しとる。水素エネルギーとか、熱交換器とか。「海洋エネルギー」にまつわる研究は、神戸学院大を中心に進んどってな?地下に酸素を供給するのも、海の水が担っとるんや」
「…へぇ」
「驚いた?」
「なんか、色々大掛かりやな…」
「そう?」
「めちゃめちゃお金かかってそう」
「仕方ないやろ?人類が生き残るためや」
「…地下で?」
「将来ここで暮らしていける設備が、年々整備されとる。莫大な費用が投じられとるが、その甲斐もあってこの大空間が出来上がった。多くの人が携わっとる。多くの企業や、団体も」
「誰もおらんけど?」
「ここはな?この施設の管理室やメンテナンス室には、たくさん人がおるで?ほら。あそこにも人おるやん」
「どこ?」
「あそこ。2階の窓の向こう」
「…ああ、確かに」
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