雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第328話

公開日時: 2023年9月19日(火) 22:19
文字数:1,154


 「商業区!?」


 「そうや。まだまだ構想中やけどな」


 「そんなもんが必要なんか…?」


 「“商業”って言うても、通貨は使用せんけど」


 「どゆこと!?」


 「災害が起こった後の世界で、お金なんて必要ない。必要なのは資源と、それを利用できる環境や。何人生き残れるかは別として、人が暮らしていける生活のサイクルが必要になる。食料に水。服装品。電気なんかのエネルギーもそうやな。とにかく、そういった“場”を形成する必要があるんや」


 「地下に…?」


 「地上では、人は住めんくなる。せやからこの場所がある」


 「住めんくなる…?いつから…?」


 「まだまだ先の話や」


 「先って…」


 「想像できんか?」


 「そりゃ、まあ」


 「でも目の前にあるやろ?この「場所」が。こんな大掛かりな施設が、ただの“地下”として存在しとるとでも?」


 「言っとることはわかるけど、地下で暮らすつもりなんか!?」


 「そうやで?」


 「えぇ…」


 「不思議か?」


 「…そりゃそうやろ」


 「まだまだ、課題は山積みや。よぉ見とき?いずれ暮らすことになるかもしれんで?」



 フロアの中央には、巨大な柱が天井まで繋がっていた。


 柱の直径はゆうに30mは超えている。


 まるで港の工場にある、円筒型の貯蔵タンクみたいだった。


 表面は金属っぽい硬い素材で出来ており、壁には階段が取り付けられていた。


 柱にしては大げさだった。


 こんなに太い必要があるのか…?


 下手したら、ポートタワーよりもでかいんじゃ…



 「これは柱とちゃうで?まあ、天井を支える役割も担っとるが、重要なのはそこやない」


 「柱ちゃうの?」


 「あの柱は海と繋がっとる。“海水“が入っとるんや。要するに「配管」やな。役割としては」


 「配管!?デカくね??」


 「海水を濾過する装置と繋がっとる。それから、『海洋温度差発電』っていう仕組みを利用して、発電ができるようになっとる。発電方法は他にもあるが、地下都市のライフラインを確立するために建造されたんや」


 「水力発電…ってこと?」


 「そうそう。深海1000mの海水を汲み上げるプロジェクトも進行しとる。水素エネルギーとか、熱交換器とか。「海洋エネルギー」にまつわる研究は、神戸学院大を中心に進んどってな?地下に酸素を供給するのも、海の水が担っとるんや」


 「…へぇ」


 「驚いた?」


 「なんか、色々大掛かりやな…」


 「そう?」


 「めちゃめちゃお金かかってそう」


 「仕方ないやろ?人類が生き残るためや」


 「…地下で?」


 「将来ここで暮らしていける設備が、年々整備されとる。莫大な費用が投じられとるが、その甲斐もあってこの大空間が出来上がった。多くの人が携わっとる。多くの企業や、団体も」


 「誰もおらんけど?」


 「ここはな?この施設の管理室やメンテナンス室には、たくさん人がおるで?ほら。あそこにも人おるやん」


 「どこ?」


 「あそこ。2階の窓の向こう」


 「…ああ、確かに」

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