俺たちは、一緒に甲子園に行くことを夢見ていた。
子供の頃によく西宮まで行って、青い空の下に響くアフリカン・シンフォニーを、遠巻きに聞いてた。
アイツが言い出したんだ。
試合を見に行こうって。
俺は、野球になんて興味なかったのに。
真っ逆さまに落ちてくる日差しと、グラウンドに立ち込める熱気。
球場の南西から吹きこんでくる海風が、ライトスタンドの上空を泳いでいた。
ハタハタとゆらめく校旗のそばで、響き渡るサイレン。
アルプスには、たくさんの人が埋まっていた。
泥だらけのユニフォームと、空に舞い上がる白球。
滴る汗が、ジョックロックの演奏の下で煌めき。
アイツは夢中になってた。
こっちは暑くて、少しでも涼もうと日陰に座っていたのに、いつまでもスタンドから試合を見てて。
なにがそんなに面白いんだろうと、当時は思ってた。
サッカーとかバスケの方が、かっこよくね?
そう言うと、「ちっともわかってないな」と不貞腐れたような顔をしてた。
それをからかうのが、面白くてさ?
読み終わったら、ポイントを付けましょう!