雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第296話

公開日時: 2023年8月18日(金) 15:09
文字数:1,002


 「C!?」


 「Cがどうかした?」


 「…いや、BとかCとか、ほんならDも!?」


 「まあそうなるな」


 「そんなにたくさんあるん!?」


 「そう言うとるやろ」



 …えぇ


 色んな世界があるって言ってたのはわかるけど、改めて聞くとぶっ飛んでるな。


 チャンネルはわかりやすい。


 わかりやすい?


 うん、まあ、今までのに比べたら。


 頭の中には色んな世界に繋がる通信路があって、ここじゃない別の世界、——つまり「B」とか「C」とかの世界に行けると…




 …いや、わかりにくいわ!!!!!



 「アホやなやっぱ」


 「理解できるわけないやん」


 「今なるほど言うとったやん」


 「反射的にな?」


 「色んな部屋に行けるって想像してみ?」


 「色んな部屋?」


 「大きい家があるとするやろ?ホテルの方がわかりやすいか。とにかくあんたはマスターキーを持っとって、好きなように好きな部屋に行ける。「部屋」っちゅーのは世界線のことや。おわかり?」


 「…うーん??」




 わかるようなわからないような…


 大体“頭の中にチャンネルがある”ってなんだよ


 引っかかってんのはまずそこだ。



 「私たちの頭の中には、プールが存在しとんや」


 「まーたわけわからんことを…」


 「この「プール」って言うんは、巨大な水たまりのことや」


 「ほう…」


 「水は、手のひらの上に掬い上げても、石ころみたいに決まった形を持たないやろ?」


 「うん…」


 「あんたは過去を思い返す時、何を思い浮かべる?」


 「何を…って…」


 「彼女ができたことは?」


 「ない」


 「テストで100点取ったことは?」


 「ない…」


 「…プッ」


 「おい!何がおかしいんや??」


 「…いや、可哀想やなって思って」



 ふざけてんのかこいつ。


 一生懸命聞こうとしてんだぞ。


 こっちは。



 「すまんすまん。…えーっと、どこまで話したっけ」


 「テストがどうとか」


 「ああ、そうそう。あんたの過去はあんたの過去。これから未来で起こることは未知数でも、過去は“変えられない”。——つまり「過去」はすでに決まった数字。そう考えることはできる?」


 「…………うん」


 「なんやねんその「間」は…。まあええわ。過去は過去、未来は未来。そう考えた時に、物事の経過や「過程」はどこに存在しとると思う?」


 「…………過去」


 「やろ?やとしたら、過去は常に変化しないもんや。常に同じ場所にあって、変わることがない。違うか?」



 …んー??


 まあ、そう…だよな


 過去は変わらない。


 俺が昨日食ったもんが、焼きそばから突然カレーに変わることはない。


 当たり前の話だけど。

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