“やっぱり、夢じゃない”
そんな気持ちに襲われて、ふと、彼女を見る。
振り向く素振りもない横顔。
女子らしくない汚れたスニーカー。
千冬の機嫌は良くなかった。
良くないっていうか、イラついてるというか。
まあ、俺のせいなんだろうけど。
「いつまで続けるんや?」
「え?」
「ええ加減ネタばらしせえや。おもろいのはわかったから」
だから違うって。
これがネタなら、どんなにいいだろうって思うよ?
つーかネタってなんだよ。
まさか、俺がふざけてるとでも?
「ほんまに行くつもりなんか?」
「どこに?」
「須磨高!」
「ああ、うん」
「ふーん」
「なんやねん、ふーんて」
「別に」
盛大に勘違いしてるみたいだが、俺は至ってまともだからな?
どう思ってるのかはさておき、せめて変人扱いするのだけはやめてくれん?
一大事なんだっつーの。
「よっぽど好きなんやな」
「…はいはい」
「ちゃんと教えてくれるんなら信じたるで?」
「…教えるって?」
「あんたの好きな人」
無理無理無理。
昨日も言っただろ?
いちいち蒸し返すなって。
他のことならなんでも話すが、それだけは無理。
無理っつーか、こんな流れのような状況で言えることじゃない。
…それに、どうせ言ったってまともに聞きゃしないだろ?
“ネタ”とか言い出すに決まってる。
笑いながら、はいはいとか、へぇとか。
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