つい最近までは、空に架かった電線を覆うほど枝を垂れ下げた道端の木々が、トンネルを作るかのようにたくさんの葉をつけていた。
山の麓の近くはとくにそうだ。
ブナにケヤキにクスノキに。
っていうか“麓”って言ってるけど、この前先輩に指摘されたんだよね。
摩耶山の麓はもっと低いところにあるって。
でも坂を登ったら山の斜面が竹林のそばに伸びて、急に大きくなるんだ。
森が。
麓ってそういうことじゃないの?って聞いたら、違うって言われた。
阪急王子公園駅からスタートして、住宅地の坂道を登りきったところにあるのが神戸高校。
その裏が摩耶山への最短コースの上野道の取りつき。
だからそれが「麓」でしょって言うんだけど、違うって。
よくわかんないが、言ってる意味はわかるよ?
山のいちばん低いところのことでしょ?
ようは。
元々は高校のあった場所も摩耶山の一部だった。
それが神戸市内の発展に伴って土地が整備され、今の姿になったというわけだ。
急勾配の地獄坂も、その名残りだ。
パシッ
パシッ
ランニングの後、土井先輩とブルペンに入った。
ウエートトレーニングをする予定だったけど、急遽変えてもらった。
どうしても確かめたいことがあったから。
「ビデオ撮るんか?」
「お願いします」
チェックしたかったのは投球フォームだ。
最近下半身の使い方がおかしい。
ストレートが思った以上に伸びない。
球速がどうこうとかじゃなく、指先に残る感触に、少し違和感があって。
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