自転車を漕ぐ男子校生。
急ぎ足で歩いている小中学生の子たち。
オフィス街へと向かうスーツ姿のOL。
燕。
時間が止まることなんてあり得ない。
だけど前に一度、俺はこの光景を目にした。
フラッシュバックする記憶。
カンカンカンカンという踏切の警告音。
——雨。
あの時、空から降ってきた雨粒が空中に止まり、全ての音が遮断されて、線路上の電車が停止してた。
雨粒は視界全部を覆ってた。
シャボン玉みたく重力を失って、水の表面がくっきりと見えるほどに、近く。
停止した電車の前に立つアイツが、踏切の向こう側にいた。
猛スピードで近づいてくる機体の真正面に立ち、逃げる素振りもなかった。
あの時も確か、空が回転していた。
上空に飛行していく雲団が街の上を通過し、重力に引きつられるように風の内側をゆらす。
サァァァという木の葉の音が地面を蹴り、防波堤の壁にぶつかる波が、いくつもの泡を形成していた。
空気は茫漠とした風の中に膨らんでいた。
時間が、動いていた。
微かな“揺れ”も逃さないほどに、——速く。
アイツは、その「真ん中」にいたんだ。
何もかもが止まった空間の岸辺で、平然と佇みながら。
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