雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第251話

公開日時: 2023年7月5日(水) 21:22
文字数:472


 自転車を漕ぐ男子校生。


 急ぎ足で歩いている小中学生の子たち。


 オフィス街へと向かうスーツ姿のOL。


 燕。



 時間が止まることなんてあり得ない。


 だけど前に一度、俺はこの光景を目にした。


 フラッシュバックする記憶。


 カンカンカンカンという踏切の警告音。



 ——雨。





 あの時、空から降ってきた雨粒が空中に止まり、全ての音が遮断されて、線路上の電車が停止してた。


 雨粒は視界全部を覆ってた。


 シャボン玉みたく重力を失って、水の表面がくっきりと見えるほどに、近く。


 停止した電車の前に立つアイツが、踏切の向こう側にいた。


 猛スピードで近づいてくる機体の真正面に立ち、逃げる素振りもなかった。



 あの時も確か、空が回転していた。


 上空に飛行していく雲団が街の上を通過し、重力に引きつられるように風の内側をゆらす。


 サァァァという木の葉の音が地面を蹴り、防波堤の壁にぶつかる波が、いくつもの泡を形成していた。


 空気は茫漠とした風の中に膨らんでいた。


 時間が、動いていた。


 微かな“揺れ”も逃さないほどに、——速く。



 アイツは、その「真ん中」にいたんだ。


 何もかもが止まった空間の岸辺で、平然と佇みながら。

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