「はよ行かんと朝練に間に合わん」
時計は今6時を差している。
“6時”だ。
なんでこんな時間に起きなきゃいけないかと言うと、女が朝練を始めようとか言い出したからだ。
最初、ふざけんなよと思った。
するわけないだろ。
そう考えるのが自然で、本当にやる気が起きなかった。
大体朝練なんて強いところしかやらない。
俺たちはまだ“弱く”もない。
チームとしてまだ成り立ってすらいないのだから。
「朝メシくらい落ち着いて食わせろ」
何が嬉しくてこんなに早くから学校に行かなきゃいけないんだ。
確かにこの時間はグラウンドが貸し切り状態だ。
ソフトボール部も陸上部も使ってないから、広々と練習ができる。
でも、だから何?って話だ。
一応大ちゃんと健太が参加してくれてはいる。
2人とも寝不足気味で、無理やり参加させられてる感はあるが。
ただ、大ちゃんの方はどのみちいつも朝が早いから、そこまでって感じかな?
俺は絶賛眠いけど。
「もーらいっ!」
「あ!」
明日の朝にと冷蔵庫で温めておいた新発売のシュークリームが、強奪された。
取り返そうとしてもダメだった。
近づくと瞬間移動しやがるんだ。
とてもじゃないけど捕まえられない。
多分、物理的に不可能だろう。
この前なんか手に持ってたマヨネーズをケチャップに入れ替えられたし…
「…やめろそれ」
「鈍臭いなぁ」
インチキだからな?それ
目の前から急にいなくなるんだぞ?
どんなやつでも無理だっつーの。
シシシと笑いながら、女は得意顔を浮かべていた。
…すごく、腹が立つ。
コイツの罪状は、すでに30件ぐらいある。
主に窃盗、恐喝…etc
昨日一緒にコンビニに寄ったじゃねーか。
美味しそーとか言ってたからご丁寧に購入を促したよな?
でも結局買わなかった。
で、俺のを盗んでいる。
ふざけんなよマジで。
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