「な、何しとんや!!?」
俺は叫んでた。
気がついたら叫んでた。
考えてる時間はなかった。
どこから声が出てるのかも分からない。
だけど、「やばい」と思った。
なんでそこに立ってる…!?
なんで、そっちに!??
雨が降ってきた。
前方から来る電車と、次第に大きくなっていく振動。
瞬きをするほんのわずかな合間に、ピトッと、雨粒が落下してくる。
足が動かなかった。
ゴオオオッという爆音が、耳のすぐそばまでやってきてた。
線路までジャンプした女の残像が瞳の中に残っていても、その“現実”に追いつけるだけのスピードは、まだ俺の中にはなかった。
どれだけ速く視線を動かせば、それに追いつけることができただろう。
雨が地面に落ちる前のわずか数瞬にも満たない距離。
地上にたどり着いた雨粒の軌跡が、サァァッと世界の色を変える頃、女はただ、前方から来る風の中にいた。
パァァァァァン
と、警笛が鳴る。
その瀬戸際に、——止まり。
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