無意識にまた、顔をつねる。
…いてー
「並行世界」ってそもそもなんなんだろうか?
目の前の出来事が現実だとしたら、他にも色んな世界があるんだろうか?
神戸の街は、いつもと変わらないように見える。
空の色も。
鏡の向こうの世界、——つまりパターンっていうのは、色んな“現実”が、隣り合わせになって存在してるっていうことだよな…?
合ってるかどうかわかんねーけど、そう解釈するしかない。
“鏡の向こう”っていうのがいまいちわからんが、色んな現実の中の1つだと思えば、なんとなくしっくりくる。
昨日からそんなことばっかり考えてるが、アイツはどうやって、俺をここに連れてきたんだろう…
「未来からやってきた」っていうのを、まだ信じてない。
信じられるわけないから。
そんな、漫画の世界みたいな…
ただ、色んなことを考えてると、あながちそれも嘘じゃないのかなって思えてきた。
だって現に、“あり得ない”ことが起こってるわけだ。
それを整理しようとすればするほど、アイツの言ってたことが重くのしかかってくる。
まじで、アイツは何者なんだろうか。
宇宙人なんてことはないよな…?
うーん、無い無い。
どっからどう見ても人間だった。
そもそも、宇宙人の見た目なんて知らないけど。
“千冬を助けたい”
たしかにそう言ってた。
その言葉通りのことが目的なら、あの日の「事故」を無くす…、…そういうことなんだろうか?
千冬はあの日、海に溺れてない。
目の前の彼女は、その「現実」の中にいる。
ここが本当に“現実”かどうかは一旦置いておいて、現にそうなってる。
ってことは、ひょっとしてアイツの目的は達成されてるのか…?
助けたいってそういうことだよな?
「運命」を変えるって言ってた。
その場所に、俺を連れて行くって。
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