「そこで、私の出番というわけや」
「はい?」
女は腕を組んで、偉そうに俺たちを見た。
つい先日の練習を見て、女が誰よりも野球が上手いことは、一目瞭然だった。
だから皆も、女に興味津々だった。
一体何者なんだろうと、学校中の噂になっていたくらいだ。
投げては誰よりも速い球を投げ、打ってはホームランを連発する。
どっからどう見ても只者じゃないことはわかってた。
大ちゃんなんかとくにだ。
130キロくらいのスピードボールを投げられる女子高生なんて、全国でも早々見られない。
…いや、いないんじゃないか?
男子だったらゴロゴロいるけど、女子じゃ聞いたこともない。
大ちゃんは元々ピッチャーだから、その凄さがよくわかってた。
だから、食い入るように見てたんだ。
打ったり、投げたりしている姿を。
「私があんたたちを甲子園に連れてったる!」
耳を疑った。
全員そうだ。
少なくとも俺は、何を言ってるんだろうと思ってしまった。
…単純に、馬鹿げてるし。
健太は笑いながら、甲子園って、あの甲子園?と疑問を投げかけていた。
祐輔はいいんじゃない?とかテキトーなこと言ってるが、ツバサや岡っちは、あまりの現実離れした発言に、互いに目を合わせていた。
大ちゃんに至っては眉間に深いシワを寄せていた。
衝撃的な発言を聞いて、女が何を言ってるのか理解しようとしたんだろう。
が、恐らく、どう頑張っても理解できないから、形容し難いくらい険しい顔になったんだ。
俺は俺で、鼻で笑った。
それくらいぶっ飛んでると思ったから。
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