千冬だって例外じゃない。
きっとアイツも高校生になれば、嫌でもわかっただろう。
スピードもパワーも、大人に近づくほど差が開く。
まだ、男と差がなかった小学生の頃だったから、夢を追いかけられてたんだ。
甲子園に行きたいと言う気持ちも、豪速球を投げたいという想いも。
でも女は言うんだ。
千冬は未来では、“プロ野球選手を本気で目指してた”って。
そんなバカなって思った。
だって「プロ野球選手」だぞ!?
確かにアイツは、いつも遠い景色を見てた。
いつだって勝ち気で、いつか海の向こうまで行くんだ、って、わけわかんないこと言ってさ。
でもそれは、俺たちがまだ子供だったからで…
「亮平!ブルペン行くぞ!」
守備練がひと段落して、女は俺を呼んだ。
まだティーバッティングの最中だってのに。
「俺は認めとらんからな」
エースがどうのってよりも、まずコイツがチームの一員だってのが納得できない。
100歩譲って、入部するのは別に構わない。
けど、なにが“甲子園を目指す”だよ。
朝練だって無理やり連れてこられてはいるが、ぶっちゃけ明日からでも辞めたい。
朝練のせいで授業中に寝てしまうことも増えた。
前はそんなことなかった。
どんだけつまらない授業でも、友達と喋るくらいの余裕があったし。
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