雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第361話

公開日時: 2023年10月20日(金) 21:11
文字数:802


 神戸高の野球部は、強豪ってわけじゃないが、ちゃんとした野球部でもある。


 メンバーだってちゃんといる。


 3年生が引退して人数が減ったけど、2年の先輩と俺たちだけで、ざっと20人くらい。


 春には新入生が入ってくるし、それなりに戦える環境が整ってるとは思う。


 甲子園を目指せって言われたらちょっときつい気もするが、公式戦にすらまともに出れない須磨高と比べたら、だいぶマシだ。


 部室にエアコンが完備されてんだぞ?


 ついでに洗濯機も。


 倉庫にはバットもボールもたくさんあるし、練習で困るようなことはない。


 何より、野球部専用のグラウンドがあるのが一番びっくりした。


 いや、当たり前なんだけどさ?


 ずっとそんな環境にいなかったから、なんか新鮮で。



 拓海と一緒に職員室に行った。


 お互い、プリントを取りに。


 置きっぱなしの傘のある傘入れと、扉付きの下駄箱。


 学級新聞が貼られた階段の踊り場と、放送室の横にある職員室。


 廊下でばったり担任の先生と会った。


 相変わらずガタイがいいな。


 180センチはあるんじゃないか?


 イッシーは柔道の顧問でもある。


 時々イカついグラサンをかけてる。


 外で見かけたら絶対に学校の先生だとは思わない。


 ジャージにグラサンだぞ?


 見た目と職業に差がありすぎる。


 そのくせ、担当科目は家庭科だし。



 「リョウスケ。ちゃんとプリント持っていけよ」


 「わかってますって」



 しゃがれた声で睨みを利かすイッシー。


 初対面だとビビり散らかすところだが、実は、気さくな先生でもある。


 それがわかってからは接しやすくなった。


 というか、俺はプリントを忘れたことはない。


 忘れたのは「こっちの世界の俺」で、俺じゃない。


 聞く話によると、『俺』はかなりだらしない側面があるみたいで、野球以外に興味がないやつだった。


 勉強なんて俺よりできてない。


 なんで神戸高に入学できたのか疑問だが、想像以上に野球に熱中しててビビった。


 まあいいけど。


 どんな高校生活を送ってようが、自分のことだし。

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