教室のドアをあけると、そこには知らない人たちばかりで埋め尽くされていた。
みんな、俺の顔を見るなり挨拶を交わしてきた。
どっからどう見ても部外者のはずなのに、俺がここにいることが当たり前のように接してくる。
理屈ではわかってても、慣れなかった。
どうやら本当に、俺は神戸高の生徒らしい。
千冬に挨拶する横で、俺も色々声をかけられた。
「亮」とか、「亮平」とか、「亮ーちゃん」とか。
仕方なく挨拶を返した。
…が、どうしてもぎこちなくなる。
誰だよちゃん付けしてるやつ。
別に構わないが、そんなふうに呼ばれたことがないからびびった。
祐輔からは「亮ちん」と呼ばれてるが、あいつはそういうキャラだから。
自分の席がどこかもわからずに彷徨っていると、一際大きな声で挨拶してくるやつがいた。
短髪で、目尻にホクロ。
ブレザーを椅子にかけて、膝を組んでいる。
俺を見るなり「おっす!」と言って、男らしい腕を振ってきた。
茶目っ気のある、涼しい笑顔が、健康的な肌の下で映えていた。
「朝練サボんなや」
ああ、そうだ。
結局朝練には行かなかった。
時間的に十分間に合ったんだが、ちょっと用事があって。
「…すまん」
ってことは、こいつは野球部なんだろうか?
ってかそれ以外にないよな。
見た目もそんな感じだし。
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