雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第190話

公開日時: 2023年5月7日(日) 15:56
文字数:524


 教室のドアをあけると、そこには知らない人たちばかりで埋め尽くされていた。


 みんな、俺の顔を見るなり挨拶を交わしてきた。


 どっからどう見ても部外者のはずなのに、俺がここにいることが当たり前のように接してくる。


 理屈ではわかってても、慣れなかった。


 どうやら本当に、俺は神戸高の生徒らしい。


 千冬に挨拶する横で、俺も色々声をかけられた。


 「亮」とか、「亮平」とか、「亮ーちゃん」とか。


 仕方なく挨拶を返した。



 …が、どうしてもぎこちなくなる。


 誰だよちゃん付けしてるやつ。


 別に構わないが、そんなふうに呼ばれたことがないからびびった。


 祐輔からは「亮ちん」と呼ばれてるが、あいつはそういうキャラだから。



 自分の席がどこかもわからずに彷徨っていると、一際大きな声で挨拶してくるやつがいた。


 短髪で、目尻にホクロ。


 ブレザーを椅子にかけて、膝を組んでいる。


 俺を見るなり「おっす!」と言って、男らしい腕を振ってきた。


 茶目っ気のある、涼しい笑顔が、健康的な肌の下で映えていた。



 「朝練サボんなや」



 ああ、そうだ。


 結局朝練には行かなかった。


 時間的に十分間に合ったんだが、ちょっと用事があって。



 「…すまん」



 ってことは、こいつは野球部なんだろうか?


 ってかそれ以外にないよな。


 見た目もそんな感じだし。


 

 

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