「とりあえずちゃんと説明してくれ!頼むから」
「説明もクソも、話しかけてきたのはそっちやろ?」
「??」
「…ほら、電車で」
やめろよその顔。
困ってんのはこっちなのに
はじめから伝えようとした。
電車に乗って、それで…
でも、全然伝わらなかった。
伝わらないどころか、逆に混乱させてしまったみたいだった。
しかも、記憶にもないことを言い始めるし
電車に乗ってたのは、急遽部活が休みになったから。
それで、“バッセンに行こう”って話になったらしく…
そんな話をした覚えはない。
彼女の言う通り、確かに今は学校の帰りだ。
けど、彼女が着てるのは神戸高校の制服だった。
ネイビーとグリーンのプリーツスカート。
ハイソックスには、「K」と書かれた赤のワンポイントがある。
学生証を見て、わかったんだ。
彼女が、神戸高校の生徒だと。
「俺、須磨高の生徒なんやけど?」
「え、正気か??」
そうだけど??
正気を疑われるようなことは言ってない。
見ればわかるだろ?
制服だってそうだし、学生証だってちゃんと持ってる。
なんなら見せようか?
少なくとも俺は、神戸高校の生徒なんかじゃない。
服見てみなよって、彼女は言う。
服?
そう思って、視線を落とした。
——え?
何、これ…
灰色のカーディガンの胸についた、神戸高の紋章。
グレーチェックのスラックス。
それから、赤色のネクタイ。
着た覚えのないそれらの見た目が、ありありと視線の先に映った。
ニューバランスのスニーカーは、以前から欲しいと思っていたローカットタイプの黒色。
ポケットには何故か定期券入りのカードケースが。
中身を見ると、彼女と同じ神戸高校の学生証があった。
——「木崎亮平」と、記入された。
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