「ビビりすぎやろ」
「…一回深呼吸さして」
「ご自由に」
体に力が入らない。
落ち着こうとしてるけどダメだ。
胸がドキドキする。
怖いっつーか、得体がしれなさすぎるんだよな…
これから何が起こるのかわかんねーけど、最悪なこともあり得る
…だって、首に針が刺さるんだぞ??
ただの針じゃなくて、丸いソケットのような金メッキ端子が、周囲を囲むように付いている。
けっこう…大きい。
「…うう」
注射器を刺すみたいな、そんな可愛らしいもんじゃないのは確かだった。
まじで一回深呼吸しよ。
てか、水ない?
喉カラカラなんだが。
「カウントダウン始めるで?」
「待て待て待て!」
「なんやねん、騒がしいなぁ」
そりゃ騒がしくもなるだろうよ。
お前は平然としすぎ!
これから機械と繋がれようっていう人間が目の前にいるのに、なんだその目は!
目が死んでるぞ!
冷ややかだな!
「どうやったら落ち着けるん?」
「今落ち着こうとしとる」
「…はぁ、情けな」
俺が情けないのかお前が異常なのか。
俺はお前に投票するね。
この状況で落ち着ける奴なんている?
もしいたら、そいつは将来大物になれるだろう。
心臓に毛が生えてるってレベルじゃない。
ビビり散らかす俺に詰め寄ってきた。
“無事に“たどり着けるかどうかわからんけど、頑張れ、って。
「無事に…って、お前なぁ」
「ハハハッ。冗談や冗談。心配せんでも無事に着くから」
「…あーもう、クソッ。もうええ!さっさとしろ!」
考えても埒が明かない。
ビビってもしょうがない。
もうなんとでもなれ!
目を瞑って、シートに座り直した。
落ち着くにはまだ時間がかかるだろうけど、何度か深呼吸すれば、少しはマシになるだろ。
で、こっからどうすればいいんだ??
頭を預ければいいのか?
なあ?
シャンプーの香りが、そっと頬の横を掠める。
冷たい機械の肌触りが、背中越しに伝わってた。
何が起こるかわからない。
そんな意識の奥で、柔らかい感触が、頬の上に留まった。
「…え?」
蒸し暑い空気は、息を止めるほど喉の奥を乾かしていた。
換気扇の回る音も、天井から落ちてくる薄暗い照明も。
過呼吸になりそうなくらいの緊張が、瞼の上を覆ってた。
張り裂けそうな心臓の音が、耳のそばに聞こえるほど。
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