外に出ると、入口横の昇降口に、一之瀬さんがいた。
他のクラスの女子と何か話してた。
でかいバックを担いでる子が何人かいるけど、テニスラケットとかじゃないよな?
よく見ると、金色の物体を手に持ってる子がいる。
トランペット??
一之瀬さんは確か、チア部だったっけ?
チア部でも、時期によっては吹奏楽部と合同でやってるらしい。
文化祭の共演で、今はよく合同で練習してるって言ってたんだ。
ってことは、吹奏楽部の子達かな。
それにしてもデカい。
背の半分くらいはある。
めちゃくちゃ重たそう。
「ほんならまた明日な」という声が聞こえた。
話してた女子たちに手を振って、俺の方に向かってくる。
…まさか、本当に手伝うつもりなのか?
一之瀬さんは、今日は部活休むって言ってた。
記憶喪失の件もそうだが、「人探し」についても、彼女に話していた。
それで、学校が終わった後に須磨高に行くって言ったら、「手伝ってあげる」って言われたんだ。
手伝うって言っても、別に1人でできないようなことじゃない。
それにアイツの顔も知らないだろ?
だから、大丈夫って言ったんだ。
行くだけ行ってみるだけだし。
「おっそいなぁ」
「ほんとに手伝ってくれるん?」
「そもそも今日は映画見る約束やったんやけど?」
そういえばそうでした。
悪いけど、非日常的すぎて全く現実感が持てない。
彼女は半ば不貞腐れたような顔をして、ほっぺたを膨らませてた。
ごめんごめん。
ちなみに彼女には、“本当”のことを全部伝えてる。
あまりにも親身になって聞いてくれるから、一から整理して伝えていた。
千冬との打ち合わせの件も含めて。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!