雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第225話

公開日時: 2023年6月10日(土) 21:26
文字数:956


 後ろで大声を出している岩崎を尻目に、音楽室のドアを開けて階段を降りた。


 途中何度かつまづきそうになった。


 中年オヤジのくせに足が速い。


 岩崎に捕まえると色々めんどくさいんだよ。


 体育の教師のくせに、変に理屈っぽいところがあるから。



 ゼーハーゼーハー…



 なんとか撒けたみたいだが、これじゃもう中には入れないな…


 別に逃げる必要もなかったのか…?


 いやいや、捕まったら最後、追い出されるに決まってる。


 どっからどう見ても俺たちは部外者だし、ここに来た目的だって、ちゃんと説明できない。


 目的というか、”理由“というか。


 正直に伝える必要はない。


 そんなことをした暁には、漏れなく変質者に昇格だ。


 この歳でキチガイだと思われたくはない。


 だって、いるかもわからないヤツを探してるって言ったところで、は?って感じだろ?


 深掘りされたらややこしいことになりそうだし、極力、下手を打ちたくはない。


 それに岩崎は、ゼッッタイに俺の話を聞かないだろう。


 授業の時もそうだが、仮病なんてしようもんなら、”証拠を提出しろ“とか言ってくるタイプだ。


 他の先生はそんなことないのに、岩崎だけはホントにめんどくさいんだ。


 せめて話さえ聞いてくれれば、ワンチャン許してもらえるかもしれないけど…


 友達に会いに来たとか、適当に言えばいいわけだし。



 俺たちはしばらく物陰に隠れてた。


 追っ手が来てないか隈なくチェックしたあと、できるだけ目立たないように、学校の周りを散策してみることにした。


 知っている人たちはほとんど見つからなかった。


 ゼロじゃない。


 何人かは知ってる人がいた。


 先輩とか、同級生も。



 「…ゲッ、岩崎のやつ、まだ俺らのこと探しとるで」


 「見つからんようにせんとね…」


 「あっちから回ってみるか?体育館横にセミナーハウスがあんねん。給食室とか弓道場があるし、見つかりにくいやろ」


 「ほんならはよ行こ!」



 弓道場っつったら、松原さんがいるかな。


 仮にいたとしても、練習の邪魔はしたくない。


 なんつったってキャプテンだもん。


 1年でだぞ?


 すごくないか?


 まあ、色々事情があったから、本人はあんまり嬉しく思ってないみたいだけどさ。


 でもすごい。


 どんな事情があるにせよ、キャプテンを任される器ってことだ。


 そこらへんのやつじゃ務まらないポジションだ。


 少なくとも、俺とかは無理。


 ある程度才能があるやつじゃないと。

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