雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第253話

公開日時: 2023年7月8日(土) 06:45
文字数:610


 見慣れないセーラー服。


 肩の下まで伸びた髪。


 1人の女子高生が、信号機の上に“座っている”。


 足を組み、俺を見下ろすようにその子はいた。


 まるで、目の前の全ての出来事を傍観しているように。



 最初、俺の見間違いかと思った。


 信号機だぞ…?


 何度目を擦っても、ランプのカバーの上に座っていた。


 どうやって登った?


 梯子なんてついてないはずだ。


 大体…



 うまく言葉も出なかった。


 だってそんなところに、人がいるなんて思わないし


 

 空いた口が塞がらなかった。


 視線は硬直したままだった。


 瞬きもできないまま。



 音は、どこまでも深く鳴り止んでいた。


 風の吹く方向はもう見えない。


 動きのない“時間”だけが、どこまでも緩やかに続いていた。


 …いいや、もしかすると、それは水の流れのような滑らかさを持っていたかもしれない。


 “誰かがいる”と認識する間際、その一瞬の切れ端に届いた僅かな光の“揺れ”が、まだ、視界の半分も覆っていなかったから。



 ダッ



 呆気に取られていると、少女は空中に身を投げ出した。


 信号機の上から飛び降りたんだ。


 地面までは、結構な高さがあるにもかかわらず。



 タンッ…!



 スカートが靡く。


 髪が逆立つ。


 加速する重力に引っ張られ、交差点の真ん中にダイブする。


 アスファルトの表面にスニーカーがぶつかり、軽やかな音が響く。


 躊躇はなかった。


 それくらい、身軽だった。


 地面についた膝を持ち上げ、ムクッと立ち上がる。


 凛とした佇まいが、停留する時間の岸辺にあった。


 中央幹線の、ど真ん中に。



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