見慣れないセーラー服。
肩の下まで伸びた髪。
1人の女子高生が、信号機の上に“座っている”。
足を組み、俺を見下ろすようにその子はいた。
まるで、目の前の全ての出来事を傍観しているように。
最初、俺の見間違いかと思った。
信号機だぞ…?
何度目を擦っても、ランプのカバーの上に座っていた。
どうやって登った?
梯子なんてついてないはずだ。
大体…
うまく言葉も出なかった。
だってそんなところに、人がいるなんて思わないし
空いた口が塞がらなかった。
視線は硬直したままだった。
瞬きもできないまま。
音は、どこまでも深く鳴り止んでいた。
風の吹く方向はもう見えない。
動きのない“時間”だけが、どこまでも緩やかに続いていた。
…いいや、もしかすると、それは水の流れのような滑らかさを持っていたかもしれない。
“誰かがいる”と認識する間際、その一瞬の切れ端に届いた僅かな光の“揺れ”が、まだ、視界の半分も覆っていなかったから。
ダッ
呆気に取られていると、少女は空中に身を投げ出した。
信号機の上から飛び降りたんだ。
地面までは、結構な高さがあるにもかかわらず。
タンッ…!
スカートが靡く。
髪が逆立つ。
加速する重力に引っ張られ、交差点の真ん中にダイブする。
アスファルトの表面にスニーカーがぶつかり、軽やかな音が響く。
躊躇はなかった。
それくらい、身軽だった。
地面についた膝を持ち上げ、ムクッと立ち上がる。
凛とした佇まいが、停留する時間の岸辺にあった。
中央幹線の、ど真ん中に。
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