雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第285話

公開日時: 2023年8月7日(月) 22:13
文字数:779



 …ゲート?


 なんじゃそりゃ…


 そんなこと言われても意味わからんぞ


 連れて行ったって、…なんで?


 なんのために?


 それに今難しいこと言わなかったか…?


 …ベッケン…シュタイン?


 …なんて?




 「『ベッケンシュタイン境界』。時間とその距離のエネルギー量の上界値を、言い換えた言葉や」


 「…は?」


 「まあ、難しいことはええねん。ようするに、確率が変化しとる領域に、その“境界”は存在する。こことは違う世界が、存在しとるようにな」



 …えーっと



 簡単に説明したつもりなんだろうが、全然伝わってないからな?


 確率が変化するってなんだよ…


 そもそも、「境界」って?



 「元々その境界は、世界には存在せんかった。…いや、“事象化しなかった“と言った方がいいかもしれん。…とにかく、全てが変わった。隕石が落ちた日から」


 「…隕石が、…落ちてから…?」


 「時間に“歪み”が生まれたのはあの日からや。…いや、まあ、それよりももっと以前に、世界は変わったが…」


 「…何が変わったんや?」


 「時間に「穴」が開いた。過去と、未来を結ぶたった一本の線が、失われた。一本しかなかったはずの、時計の”針”が」


 「よぉわからんけど」


 「雨が降り続けとるって言うたやろ?未来でそんなふうになったんは、世界の「形」が変わったせいや。“空が落ちてきた”って言うんは、つまり…」






 ザァァァァァ…




 病室の窓の外では雨が降っている。


 さっきまで、そんな気配はなかったのに。



 未来で、雨が止んでない。



 それがどういうことかを、うまく理解することができない。


 “隕石が落ちてきた”


 そんな出来事を、一体どうやって受け止めろって言うんだ?


 わかんねーよ…


 話がデカすぎて



 正直な話、未来がどうなってるかなんてどうでもいいんだ。


 誰だってそうだろ?


 目の前のことで精一杯で、何十年も先のことを考えてる暇なんてない。


 せいぜい、今日の晩飯について考えるくらいだ。


 友達との約束とか、塾とか。

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