…ゲート?
なんじゃそりゃ…
そんなこと言われても意味わからんぞ
連れて行ったって、…なんで?
なんのために?
それに今難しいこと言わなかったか…?
…ベッケン…シュタイン?
…なんて?
「『ベッケンシュタイン境界』。時間とその距離のエネルギー量の上界値を、言い換えた言葉や」
「…は?」
「まあ、難しいことはええねん。ようするに、確率が変化しとる領域に、その“境界”は存在する。こことは違う世界が、存在しとるようにな」
…えーっと
簡単に説明したつもりなんだろうが、全然伝わってないからな?
確率が変化するってなんだよ…
そもそも、「境界」って?
「元々その境界は、世界には存在せんかった。…いや、“事象化しなかった“と言った方がいいかもしれん。…とにかく、全てが変わった。隕石が落ちた日から」
「…隕石が、…落ちてから…?」
「時間に“歪み”が生まれたのはあの日からや。…いや、まあ、それよりももっと以前に、世界は変わったが…」
「…何が変わったんや?」
「時間に「穴」が開いた。過去と、未来を結ぶたった一本の線が、失われた。一本しかなかったはずの、時計の”針”が」
「よぉわからんけど」
「雨が降り続けとるって言うたやろ?未来でそんなふうになったんは、世界の「形」が変わったせいや。“空が落ちてきた”って言うんは、つまり…」
ザァァァァァ…
病室の窓の外では雨が降っている。
さっきまで、そんな気配はなかったのに。
未来で、雨が止んでない。
それがどういうことかを、うまく理解することができない。
“隕石が落ちてきた”
そんな出来事を、一体どうやって受け止めろって言うんだ?
わかんねーよ…
話がデカすぎて
正直な話、未来がどうなってるかなんてどうでもいいんだ。
誰だってそうだろ?
目の前のことで精一杯で、何十年も先のことを考えてる暇なんてない。
せいぜい、今日の晩飯について考えるくらいだ。
友達との約束とか、塾とか。
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