「じゃ、よろしく」
…?
「なにとぼけた顔しとんねん」
とぼけているつもりはない。
なにが?
わけもわからずに見つめていると、女は続けた。
「最初に言うたやろ」
最初に…?
…いや、さすがに冗談だろ?
住む場所って、ホームレスか何かかよ。
「…意味がわからんのやけど」
「つべこべ言わんと、さっさと案内しぃや」
案内って、どこにだよ
戸惑いながら視線を預ける。
女は背筋を伸ばしながら、日差しの降る真下を歩いていた。
初対面だというのに、初対面という感じがしない。
それは俺から見てということじゃなく、単純にあっちの様子が、初めて会った時の「それ」じゃない。
違和感しかないんだが、突っ込むべきなんだろうか。
「お前は誰だ」って、もう一度問うべきか?
「千冬のこと知っとるんやろ?」
「…え?」
…ち、ふゆ?
俺は驚いた。
まさかその「名前」が、音になって届くとは思わなかったからだ。
アイツのことを知ってるのか?
…でも、まさか
「私は千冬の友達や。あんたに会いに来たのは、それが理由」
千冬の、…友達?
絶句したまま、女を追った。
ほとんど、なにも理解できないままに。
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