ショートストロークのエンジン音は、朝の音だ。
回転するタコメーターの針。
日差しを浴びて、艶がかる白色のボディ。
かっこいんだよね。
単純に。
だからおばさんにお願いしたんだよ。
高校を卒業したらバイクが欲しいって。
車種とかそんなのは、まだ決まってないけどさ?
「バナナがねぇ」
バナナがない?
何言ってんの?
テキトーにちゃちゃっと食えば?
あるじゃんそこに。
クラッカーとかパンが。
「ちょっと健康志向で行こうかなって」
「キモいこと言わんでくれる?」
「卵焼く時間ある?」
「あるわけないやろ」
時間を気にしてくださいません?
時計見えてんの?
針が『50』の数字を通過しそうですけど。
この前までこんなことなかったのに、急にだらしなくなりすぎじゃない?
いつもだったら先に着替えて待ってるレベルだった。
それが急にこれだ。
毒キノコでも食ったんじゃないのか?
じゃなきゃこうはなんないでしょ。
クマだらけの目の下であくびをかいて、「朝練に行きたくない」なんて。
「さて、行くか」
「はよせぇよ」
最近はコイツのせいで自転車通いだ。
須磨駅まではいつも自転車だけど、高校に入ってからは電車で三ノ宮まで行ってた。
朝の支度が遅すぎるせいで電車に間に合わないから、河川敷の道から突っ切ってる。
なんで私があんたの尻拭いしなきゃなんないの?
昨日は昨日でギリギリだったんだから早くしてよ。
怒られるのは私なんだからさ。
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