思わず声が出てしまうほど懐かしく思えたのは、今じゃもうそれが、すっかりカビが生えてしまってるからだ。
しばらく放置してたせいで、ほとんど使い物にならない。
ポケットに入れたりしてたから、汗で汚れてたのかも。
何にしても、もう身につけることはないだろう。
それこそ買い替えないと、見栄えも悪いし。
「あんたどこやったん?」
「 …へ?」
「お守り!」
おまもり…?
意味がわからなかった。
…いや、意味はわかる。
わかりすぎるほどに。
でも、どうして…?
目の前の女子高生は、初対面に違いはなかった。
だから俺がお守りを持ってることなんて、絶対に知らないはずだった。
だから彼女を見た。
ほとんど、口を開けたまま。
「…お守りって、これのこと?」
彼女のバックについているそれを指差し、確かめる。
どうやら、間違いないらしい。
間違いないらしいが、…意味がわからない
「何その顔」
「…なんで知っとんや?」
聞くべき言葉も、尋ねるべき内容も、きっと間違いなんかじゃない。
それなのに彼女は首を傾げ、“なんのことやら”という顔をしている。
それがどれだけ奇妙か、自分でもよくわからなかった。
それぐらい、彼女の反応はぶっ飛んでた。
「…キミ、誰?」
そう言ってしまったのは、多分、それ以外に言葉が見つからなかったからだとも思う。
たじろかずにはいられなかったんだ。
当たり前のように首を傾げるその仕草を。
彼女の、まっすぐな視線を。
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