「ちょっ、怖いって!」
やっぱり、…ある
…でも、なんで?
呆気に取られたまま、彼女を見た。
透き通った肌。
ふんわり柔らかい、ボーイッシュな髪型。
目の前の女子高生が誰かを、必死で理解しようとした。
だけど、そんなはずが…
「千冬…なのか?」
その言葉が何を意味するかを理解できないまま、勢いのままにぶつけた。
気がついたら外に出てた。
「千冬」って、その“名前“が。
彼女は不気味そうに俺の方を見た。
顔が引きつってるようにも見えた。
でも、訳がわからないのはこっちの方なんだ。
そんな顔をされても困るし、なんなら、今すぐに説明してほしいくらいだった。
”説明”っていうか、状況の整理というか。
「そうやけど」と、素っ気なく言ってきた。
だからもう一度尋ねた。
“本当に千冬なのか”、と。
彼女はただ頷いて、それがどうかしたのか?と聞いてきた。
…どうもこうも、そんな嘘みたいなことが…
「証拠は?」
「証拠ぉ!?」
びっくりした声をして、彼女はさらに後退る。
証拠というかなんというか、とにかく信じられなかった。
だから、尋ねるしかなかったんだ。
彼女が“誰”で、何者であるかを。
考え込んだように腕を組み、俺を一瞥して、「ふざけてる?」と神妙な面持ちで聞いてきた。
ふざけてない。
一切。
むしろ、それはこっちのセリフだと言いたかった。
そんなわけないと首を振ると、しつこいくらいに突っ込んできた。
「じゃあなんやねん」
「…真剣に聞いとんやけど?」
「記憶喪失にでもなったんか」
「そんなわけないやろ」
「さっきまで普通に会話しとったやんけ。怖いであんた」
「…さっきまで?」
「大体、練習しようって言ってきたのはあんたなんやし」
「練習?」
「打撃練習や!フォーム確かめたいって言うたやんけ」
「…???」
打撃練習?
フォーム??
やばい、ますますわからない。
だって俺はさっきまで女といたんだ。
電車に乗って、目を瞑ってとか言われて…
何をどう説明すればいいかも分からず、彼女が話す内容についてすらいけずにいると、しまいに大きなため息をつかれた。
ハァッ、と、呆れ顔をされたまま、もうええから行くでと、強制的に会話を切り上げられ。
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