そこに書かれてるのが、俺のことだとは思わなかった。
日付的にも、内容的にも。
2015年はまだ来ていない。
それなのに、そこにはその数字が書かれていた。
……………
………
というか…
…キス?
衝撃的な内容すぎてビビった。
なんでそんなことが起きてんのか、まったく理解できないんだが…
「…ま、まあ、内容は内容としてやな」
「人違いやないよな?」
「紛れもなくキーちゃんのことや」
「いや、そうやなくて…」
千冬が誰と“キス”したのか、そのことが頭から離れなかった。
わけわからなくね?
なんでそんな展開になってんだよ…
キスだぞキス。
まず、その「状況」がおかしい。
なにがどうなってそうなった?
…え、あり得ないよな?
大体アイツはそんなことするようなタイプじゃない。
仮にするとして、絶対俺じゃないだろ。
相手は。
「あんたしかおらんやろ」
「いやいやいや」
「内容はさておき、私の言っとったことがわかるやろ?」
「…なにが?」
「あんたに会いに行くって」
「…うーん」
「まだなんか腑に落ちんのか?」
「2015年って?」
「2015年は2015年や」
「真面目に言っとる?」
「…どういうこと?」
それはこっちのセリフなんだが。
色んな世界があるのはわかる。
ここじゃない別の世界があって、俺の知らない「時間」が、どこかに広がってる。
だからパソコンの中にある文書には、ここじゃない場所の記録が、綴ってある。
それはわかるんだ。
別の世界のことも。
「千冬」のことも。
だけど、未来の俺が何をしているかを、すぐにはすぐに想像できない。
それなのに、未来の自分が千冬と同じ世界にいて、当たり前のように会話してる。
ファーストキスという言葉。
“何十年ぶり”という不可解な言語。
…遊びにいってるんだぞ?
アイツの「家」に。
それをどんなふうに受け止めろって?
…無理だろ
…色々とさ
文書を読み進めていって、マウスを動かしながら画面を追いかけた。
そこにどんな言葉が載ってるかなんて、いちいち考えてる余裕はなかった。
ただ夢中で目を動かしたんだ。
何か見つかるかもしれない。
何か、わかるかもしれない。
そう思いながら。
「…………………………………え?」
ふと、視線が止まる。
マウスポインターが静止する。
言葉が出なかったのは、そこに書かれてるものが、絶対にあるはずのないものだったから。
目を疑ったんだ。
何行もの文字列。
何ページにも及ぶ論文。
普段なら、絶対に見ないその内容に、ふと、目を奪われた。
載ってたんだ。
そこに。
あるはずのない「名前」が。
“俺”の、名前が。
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