「いつか私も、この舞台に立ちたい」
アイツの口癖だった。
冗談だと思ったんだ。
最初のうちは。
でも、毎日練習するアイツの姿を見て、そのうちに本気なんだって思うようになった。
気がついたら俺も野球を始めてた。
そこに、特に理由なんかはなくて。
「亮平には負けへんから」
勝手にライバル意識を燃やされ、キャッチャーミットを持たされる日々。
休みの日は学校のグラウンドで、一緒に練習した。
俺がバッターで、
アイツがピッチャー。
蝉がわんわん鳴いてた。
すっかり肌は日に焼けて、誰もいないグラウンドの中を駆け回った。
くたびれたTシャツと、ブルーウェーブスのロゴの入った帽子。
なんだかんだ楽しかった。
まっすぐ夢を追いかけるアイツの姿が、どこか眩しくてさ?
あの頃の俺たちは、夏の向こうに見える新しい季節を予感してた。
大きく振りかぶったマウンドの影と、曇りのち晴れの天気予報。
サインはいつも1つだった。
構えたキャッチャーミットに、染み込んだ汗。
日に日に速くなっていくストレートを見るたびに、新しい何かが始まる気がした。
それがたまらなく、楽しくて。
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