「行くで」
キャッチボールを急に切り上げ、女は手を引っ張ってきた。
日差しはさっきよりずっと高くなり、ジージーという蝉の声が、うんざりするほど騒がしくなってきた。
街の中心からはクラクションが聞こえた。
中央幹線を往来する車。
歩道橋の下を通過していく、神戸市内の喧騒。
どこに行くのかまでは言わなかった。
でも、きっとあそこなんだろうと思った。
「連れてってやるから」と言われ、それに促されるように、自転車の後ろに俺は乗った。
ちゃんと腰掴めよと言ってきたが、女子の腰に手を回すのは慣れてなかった。
抵抗ありまくりな態度を取っていると、女はガシッと両腕を掴んで無理やり腰に回させた。
気がついたら三ノ宮の繁華街を通り過ぎていた。
時刻は、12時を回ったところだった。
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