雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第297話

公開日時: 2023年8月19日(土) 16:26
文字数:982


 「その“当たり前”の話が、当たり前や無くなったとしたら、どうする?」


 「…当たり前じゃなくなる?」


 「過去も未来と同じように、常に“変化”しとるとしたら?」



 未来と同じように…?



 ………


 …………


 ………………いやいやいや、あり得ないだろ



 もし過去が変化してたら、俺が昨日何してたのかも変わる…ってことだろ?


 合ってるよな?



 「そうそう」


 「…いやいや、んなわけないやろ」



 さすがにそこまでバカじゃない。


 過去は変わらない。


 つーか、それってさっきも言ったよな?


 変えられるもんなら変えたいぐらいなんだ。


 時間を巻き戻してでも。



 「起きたことは変えられん。けどそれはあくまで、“すでに起こったことに対する意味合い”に過ぎん。すでに起きたことやなく、起きる前の時間に目をあててみ?」


 「起きる前?」


 「あんたが昨日焼きそばを食ってなかったら?寝坊しとったら?」


 「しとったら…って、しとらんし」


 「もしもの話や」


 「そりゃ、その時はその時で」


 「それが現実に起きるとしたら?」



 現実に…?


 どういうことだ?


 そんなこと起こるわけないし、起こりようがない。


 もしかして、タイムスリップできるって言いたいのか?


 いやいや、まさかね…



 「過去の出来事が、水のように“形を持たない”って仮定してみて」


 「水のように…」


 「掬っても掬っても、バシャバシャと形を変える。水は、決まった形を持たない。そのイメージは?」


 「なんとなく…」


 「過去も未来も、1つの「時間」のプールの中に混ざり合っとるんや。過去は過去、未来は未来、そうやって私たちは、時間と時間の間に境界をつける。せやけど、その境界は元々どこにも存在しとらん。決まった「1つの過去」だけが、永久に静止するということはない。ストップウォッチのボタンを押して、時間が流れていくように」


 「は!?」


 「“世界線=並行世界”っていうのは、いわば海みたいなもんなんや。水平線の向こうまで波が広がるように、常に動き続けながら、形を変えていく」


 「形を変える…っつーのは?」


 「四角にも丸にもなれるっていう意味や」



 四角にも丸にも…


 言ってることはわかるが、それが一体なんだって話ではある。


 だってそうだろ?


 お前の話だと、いくらでも過去を変えられるって感じだよな?


 …え、そういうことだろ…?



 「間違ってはない」


 「そんなアホな話があるわけ…」


 「でも事実そうや。その気になれば、いくらでも人生をやり直すことができる」



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