ノッチ先輩はサウスポーで、コントロールを重視するタイプだ。
体はそこまで大きくない。
どっちかっていうと細身かな?
ストレート自体はそこまで速くないけど、スライダーとカーブがキレッキレで、中でも縦スラと呼ばれる縦の変化球は、バッターからしたら鋭く曲がったように落ちてくる。
カーブは緩い系というよりもパワー系だ。
変化量が大きくて、おまけに速い。
縦スラとの使い分けで高低差をうまく使ってる。
縦スラはバッターの手前で変化が始まるけど、カーブはキュッと抉ってくる感じ。
シニアの時から投げ始めてたみたいで、ボールの印象がだいぶこなれた感がある。
落差もあって打ちづらいんだよ。
すごく。
「先輩はなんでピッチャーになろうと思ったんですか?」
「俺?なんでやろ」
「確かリトルリーグの時からですよね?」
「そうそう。元々キャッチャーやったんやけどね」
「キャッチャー!?」
「リトルっつっても人がおらんくてさ?(笑)仕方なくキャッチャーやってた。珍しいやろ?左利きのキャッチャーなんて」
「見たことないですね」
「桐崎は?」
「私…ですか?」
「なんでピッチャーやろうと思ったん?」
なんで…?
なんでピッチャーやろうと思ったんだろ
えーーっと
別に、なんでも良かったんだ。
最初は。
たまたまつけたテレビ番組で、大きく振りかぶってる人がいた。
ブルーウェーブスのロゴ。
カメラ越しに映る、背番号『11』の文字。
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