昨日はネットの辞書を読み漁ってた。
「ケッコン」って、他にも意味があるんじゃないかと思い。
けど、どんだけ読み漁っても、出てくる言葉は「愛」とか「子供」とか。
当たり前っちゃ当たり前なんだが、それを自分のことに当てはめて考えると、どうも…
しかも相手は千冬だ。
別に嫌とかじゃなくて、想像できないっていうか?
考えられなかった。
…なんつーか、その、わからないわけじゃないんだ。
結婚ってのが、どういうことか。
それはそうなんだけど…
「さっきの世界でってこと…?」
「へ?」
「…いや、その、千冬と結婚したの」
「さあ、どうやろな」
いちいちはぐらかすのやめてくれん?
昨日は気になって眠れなかったんだぞ?
「あくまでそうなるかもしれんって話や」
「は!?」
「うーん、いや、今のは語弊があるな。ようは、そんな先のこと考えてもしょうがないやろってこと」
未来未来って言ってたのに、どの口がほざいてんだ?
その意見については賛成だが、そうさせてくれないのはお前だ。
「大事なのは、あんたの気持ち」
「俺の気持ち?」
「この世界のキーちゃん伝えにいく。それがいちばん大事なことや」
「この世界って言ったって…」
「ほら、諦めとるやろ?どうせ目を覚まさないからって」
そりゃ、そう言われても仕方ないけど、…でも
逆に聞きたい。
どうやって会いに行くんだ?
どうやって伝えに行くんだよ?
そう言うと、黙ってついてこいと言ってきた。
ハーバー通りを抜けた先にある、神戸大橋を指差し。
三ノ宮市街のビル群を抜け、真っ青な空と海が、ガバッと口を開けたように広がった。
橋の上に広がる飛行機雲が、飛行船が通り過ぎる前の気配を漂わせていた。
不意に思い出したんだ。
そういえば、自転車に乗ってこの橋を渡る時、赤い鉄骨の向こうに広がる空が、どこか、“懐かしかった“って。
自分が生まれるよりもずっと昔に、見たことがある。
そんな奇妙な感覚に囚われながら、神戸大橋の自転車道を走ってた。
時々夢にも見てた。
空に浮かぶ見たこともない形の船が、ずっと高いところに飛んでいて。
「飛行船が?」
「ああ、いや、なんもない」
「飛行機やなくて?」
「飛行機やない。飛行船や。飛行機と違って、ずんぐりむっくりの体型でな」
「あれやろ?気球を細長くしたやつやろ?」
「ちょっと違う」
「え?どんなやつ??」
「うーん…。もっと縦長っていうか…。よく思い出せんのんや。目が覚めたらいっつも忘れててな」
「ふーん」
「いつから見てたのかもよく覚えてない。でも、多分昔から。千冬とこの橋を渡るようになってからかな?よぉわからんけど」
「今でも見るん?」
「今は見てない」
「“懐かしい”って?」
「ここを通るときにな?イマイチよぉわからんのや。なんでそんな気持ちになるんか」
「いつから?」
「わからん。昔、ここら辺はよく通ってたから。ほら、この先に空港があるやろ?多分、その関係かもな。よく夢を見てたのは」
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