道の真ん中を走る軽トラックの排気音が、背の高い空の下に響いている。
長閑な畦道と、橋と。
牛舎のような古びた横長木小屋のそばに、広い駐車場がある。
その駐車場をまっすぐ抜けると堤防があって、海浜公園が、なだらかな斜面の向こうに広がる。
まっさらな、砂浜の向こうに。
人気のないこの場所に、おかんの店はある。
2階建ての白い鉄骨と、錆びたトタン板の壁。
事務所がある建物の横には開放式の車庫があって、シャッターは基本開けっぱなしだ。
オイルのシミついたタオルが、三脚物干しにかけられてる。
倉庫に積まれたバイク用品と、床に転がったオイルタンク。
鉄骨の梁が剥き出しの天井屋根に、屋外用のスポットライトが設置してある。
最近蛍光灯が壊れたみたいで、とりあえず取り付けてるらしい。
おかんは車庫の中でチェーンの掃除をしてた。
ホンダのシルクロードだ。
白色のボディに、レトロ感のあるレザーシート。
俺たちが来たことに驚いてた。
「学校は?」って、グリスまみれの手袋を外し。
「おばさんトースター借りるね」
「何焼くん?」
「あんたは財布探しぃや」
「財布?」
「昨日忘れたんや。多分ここに。見とらん?」
「見とらん」
「探してくる」
事務所の中に入って、ソファの周りを探した。
大きいパキラの木が置いてある玄関の横に、自動販売機が置いてある。
その奥にお客さん用のテーブルとソファがあって、俺はいつもそこで寛いでる。
テレビはあるし、漫画とかも置いてあるから。
「あったあった」
千冬は何を焼きに行ったんだろうか?
トースターは事務所の奥にあるが、しばらくすると出てきた。
さっき買った、チョココロネを手に持ち。
「あつつつつッ!」
チョコが溶けてこぼれそうになっている。
何やってんだ??
ってか俺のパン何円だった?
今返しとくわ。
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