そこに「答え」なんてないのかもしれない。
だんだんとわかったんだ。
野球を続けていくうちに。
千冬の球を、受けているうちに。
俺たちには初めから「明日」なんてものはない。
千冬はいつも言ってた。
“急に速い球を投げられるようになるわけじゃない”って。
最初はよくわからなかった。
そんなの当たり前だろって、思う自分がいた。
だけど、千冬的には当たり前じゃなかったんだと思う。
結果を出すには「今日」しかない。
そうやって、いつも練習に打ち込んでた。
先のことなんて考えてなかった。
いつだって、全力だった。
手を抜く暇なんてなかった。
千冬にとって「ストレート」っていうのは、きっとそういう意味だった。
明日よりも今日、今日よりも“今”。
——そんな時間の先端に追いつけるように、思いっきり振りかぶって。
千冬がいなくなって、いつも、千冬の姿が目に浮かんだ。
もう二度と一緒に、グラウンドに立てない。
そんな気配が頭の片隅に掠める度、明日が来ないって思った。
千冬のストレートが思い浮かぶんだ。
理屈とかじゃなく。
だから俺は追いかけた。
千冬が目指したストレートに追いつきたかった。
それに理由はなかったんだ。
もう二度と、会えないとわかっていても。
…だから、「好き」とか、そういうんじゃない。
もしかしたら、そう言えるのかもしれない。
俺にとっての「明日」が、千冬の中にある。
そんな気がする。
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