「保健室には行かんの?」
キリッと丸メガネを整え、汗をかいているザ・インテリ男子。
見た目的にもバスケの技量的にも、絶対勉強できるだろっていう“お硬い”感じの優等生が、その横で話しかけてきた。
彼は“ソウタ”と言う。
柏木聡太。
健太と語呂が似てるから呼びやすいが、見た目は“対極”って感じかな。
チャラけた部分が一切省かれたような体操服の着こなしに、磨かれたメガネのレンズ。
俺とはそれなりに仲がいいみたいだが、それにしてもバスケ下手すぎない?!
さっき余裕でトラベリング連発してたろ。
せめて軸足だけはちゃんと決めとかないとダメだ。
ペイントエリア内で棒立ち気味になってるヤツを初めて見た。
ソウタは囲碁部らしいから、バスケなんてほとんどやらないんだろうなぁ。
ちょっとしか動いてないはずなのに、汗めっちゃかいてるあたり…
「もう遅い」
保健室には何度か行こうと思った。
でもやめた。
体温計とか出されたらシャレにならん。
教室に戻りなさいと言われるのがオチだ。
それならいっそ、最初から行かない方がいい。
たっくんとソウタ。
“友達”らしい2人に挟まれながら、試合を見てた。
千冬は男子に囲まれながら、それでも、華麗なステップを決めている。
今1on1で対峙してるのは“マコト”。
灰原マコト。
正真正銘のバスケ部。
…にも関わらず、千冬はフェイントをかけ続けながら、ゴール下に潜り込もうとしている。
とんでもない運動神経だな。
さすが、ドルフィンズのエース。
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