雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第316話

公開日時: 2023年9月7日(木) 16:52
文字数:767



 パァーーーーン


 パラパラパラパラ…




 「…うわ」



 音のする方向へ、視線が動く。


 夜の静けさはいっそう深まっていた。


 ジーーーと鳴くキリギリスも、リリリリと唄うコオロギも。


 流れ星が落ちてくる。


 そんな気配のそばに、空が動いた。


 ドンッ


 という音。


 ——その、刹那の向こうで。

 



 空気が揺れたんだ。


 赤い閃光が、空に疾った。


 音はあとから追いかけてきた。


 ただ、空を駆け上がっていく光が、視界の中心へと飛び出してきた。


 街が揺り動くように空気を震わせる。


 時間が止まったみたいに、静寂が訪れる。


 手を伸ばせば届きそうなほどの近さだった。


 空のてっぺんに触れそうなほど、舞い上がった火花が鮮やかな弧を描いていた。


 口を開けたまま見上げていた。


 破裂した光が、破れながら落下していく。


 その雫を追いかけながら、咄嗟に息を止めた。


 空気の中に残る振動が、耳のそばを掠めて。



 散っていく花火が、街の中に吸い込まれていく。


 駆け抜けたのは一瞬だった。


 地上から噴き出してきた無数の光が、夜空に舞い上がったのは。



 ドンドン


 ドーーーン…



 混ざり合う、カラフルな光。


 パチパチパチッという火花の音。


 たくさんの色と、形と。


 瀬戸内海の水面が、色づいたように泡立っていた。


 ライトアップされている街の景色が、弾けていく光の粒の最中に煌めいていた。



 どこか、懐かしくもあった。


 去年もチラッと見た気がするけど、河川敷でバーベキューしてたんだ。


 だから、まじまじとは見てなかった。


 見た場所も、こんないいところじゃなかった。


 こんな、見晴らしのいい場所なんかじゃ。



 「キレイやな…」



 彼女の瞳の中で、空に咲く花火の衣が反射している。


 まるで無邪気な子供みたいだった。


 見上げた視線の下にある、その表情は。



 「好きって、伝えにいくんや」



 彼女の眼差しはただまっすぐ、俺の目を見ていた。


 まるで何も疑わずに明け放した心を、手のひらに広げてみせるように。



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