雨上がりに僕らは駆けていく Part2

目指せ、甲子園!
平木明日香
平木明日香

第322話

公開日時: 2023年9月13日(水) 16:30
文字数:937


 研究所。


 それがどんな所かを、記憶の片隅に追いかけていた。


 ひょっとすると、あの場所かもしれない。


 そう思う建物が、いくつかある。


 でも、どれも違った。


 記憶の中には無い場所だった。


 “そこ”は。



 「でっか…」



 そのあまりの巨躯に、首をのけぞらせてしまう。


 ビルじゃない。


 かといって施設のようなものでもない。


 そうだ。


 思い出した。


 テニスコートの向かい側にある森の向こうに、変わった建物があるなって思ったんだ。


 子供の頃に感じた印象は、「校舎」。


 木々の向こうにひょっこりと顔を出す四角いフォルムは、森の中にある学校って感じだった。


 横一列に並んだ窓と、平べったい屋上が。



 「ここが…研究所…」



 思わず見上げたのは、間近で見るとかなり存在感があるなって思ったからだ。


 高さ自体は10階までしかないが、想像してたよりも横に広い。


 外観は正面がガラス張りになってて、3階部分まで吹き抜けの内装が、外からハッキリと見える。


 丸太の何倍もある太い柱。


 中央に設置されたエスカレーター。


 建物の端にはエレベーターが昇降している。


 ガラスで覆われた壁の中に、各フロアの鉄骨の梁が複雑に入り組んでいて、カプセル型の本体が、人を乗せて動いていた。



 「入るで」



 …入るって言っても、正面玄関は?


 どこにドアがあるのかがぱっと見わからない。


 建物の正面は、どこからでも入ってくださいと言わんばかりに開放的だ。


 正面のガラス張りの窓は、一枚一枚がかなり大きい。


 それが上から下までズラッと並んでて、外の光を全て吸い込んでいる。


 そのせいで逆にわからなかった。


 どこが「入口」なのかが。


 正面に設置された巨大なキャノピーが、地面の上に影を落としている。


 白を基調とした鉄骨が伸びやかに空中を散歩して、滑らかな曲線が、建物の外観を美しく仕上げていた。


 戸惑ってる俺をよそに、女はスタスタと建物に近づいていく。



 「ちょっと待てよ!」



 慌てて歩いていくと、背の高いガラスに重なるように、人が出入りできる用の開閉口が見えた。


 まるで、博物館の入り口みたいだな…


 研究所のエントランスと呼ぶにはかなり大げさで、無駄に広かった。


 高級ホテルでも、こんなにスペースは取らない。


 ふと、ノエビアスタジアムの入口を思い出した。


 あれくらいのスケール感を感じた。


 流石にあそこまでは、って感じだけど。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート