花を愛でる少女を見て
吸血鬼は恋をしました
吸血鬼は血を美味しく飲みます
トマトジュースよりも
にんじんジュースよりも
人の血が大好きです
よく磨かれた牙で
相手の喉笛を
ガブリ
吸血鬼は考えます
あの子が痛い思いをせずに
ワタシが美味しい思いをするには
気づきました
涙の味が
血と似ていることに
吸血鬼は少女に贈り物をします
少女が嬉し涙を流すように
お礼に涙の粒を貰います
甘い味がします
吸血鬼は少女をくすぐります
少女が笑い涙を流すように
お土産に涙の粒を貰います
甘い味がします
少女と吸血鬼は
とても仲良しでした
他の吸血鬼と吸血鬼は
仲良しではありませんでした
血を吸わない吸血鬼など
吸血鬼ではありません
異端な存在として
貶められる日々が続きました
吸血鬼は気づきました
涙にも
味があるということに
悲しんでいた少女を慰めていた
その日の出来事でした
その日の涙は
少し
からい味がしました
血を吸わない吸血鬼は
美味しいものに飢えていました
吸血鬼はつい
つい
我慢できなくなってしまいました
今までに贈ったもの全て
壊して
壊して
ぐちゃぐちゃにしました
少女が泣いたので
涙の粒を貰っていきました
今まで優しく触れていた手で
殴り
蹴りつけました
少女が泣いたので
涙の粒を貰っていきました
少女の家を壊しました
少女は泣きました
少女の家族を██しました
少女は泣きました
少女の村を燃やしました
少女は泣き
泣きませんでした
少女の涙は枯れてしまったのでした
そのことに気づいたとき
吸血鬼の胸に
飢餓感より大きな何かが
むくむく
むくむくと湧いてきました
むくむく
むくむく
繰り返し謝る吸血鬼を
少女は見つめるだけ
二度と口を開きませんでした
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