ネコカイン・ジャンキー!2 ~仁義なき亘平編~

火星でのらの子猫を拾ったら特別な猫でした
スナメリ@鉄腕ゲッツ
スナメリ@鉄腕ゲッツ

第四十九話 再会-8

公開日時: 2021年7月1日(木) 12:15
文字数:1,162

ジーナ:僕と一緒に暮らしていた猫。あらわれたとき、火星では禁止されている「野良のこねこ」だった。

怜(とき):『はじめの人々』? それとも『センター』? 亘平の惚れた謎の美女。

遥さん・鳴子さん:亘平とジーナを匿ってくれた開拓団の双子姉妹。エンジニアと占い師。

センター:支配者である猫が管理する組織。


右藤(うどう):農場の肥料すきこみ班長

佐田(さた):ギャングの亘平の監視役。同じ班。

北川(きたがわ)・南波(なんば):同じ班の労働者

「怜、はぐらかさないでちゃんと聞いてくれ。君ともういちど巡り合うことができた。でもそれは僕が期待する理由で、じゃない。知ってる。君への思いは僕が自分自身で決着をつける。だから君は気にしないでくれ。僕はいまジーナを探すことに集中してるんだ。僕の話をまえみたいに聞いてくれ。そんなに身構えないで」

 

 怜はそれを聞いてちょっと驚いたような顔をして、そして僕の方に向き直ると、まじまじと僕の顔を見つめて、そしていきなりニヤリと笑った。

 

「生きててよかった」

 

怜は一言だけそう言うと、いきなり雰囲気を変えて本題に入った。

 

「亘平……私がここにいるのはあなたにとっていい知らせじゃない」

 

 僕は頷いた。怜がただ街で僕に気が付いただけなら、わざわざ僕にまた会いに来る理由がなかった。怜は僕にはもう二度と会わないつもりだったはずだ。

 

「誰か僕を狙っている奴がいる。あのとき乗っていたビアクルを壊したのもそいつだ」

 

怜は言った。

 

「『センター』を呼ぶためにね。亘平、ここにはもういてはダメ。『センター』に気づかれたと思った方がいい……」

 

そしていっしゅん、怜は次の言葉を言いよどんだ。

 

「遥さんが亘平に気づいたなら」

 

 怜はそう言った。ひとつひとつの言葉はこれいじょうないぐらいクリアなのに、何を言われているのか分からなくて、僕は思わず聞き返した。

 

「どういう意味だい」

 

「そのままの意味よ。あなたが亘平だと遥さんが気づいていたなら、『センター』はもうあなたが生きていると知っているはず」

 

 僕は暗闇の中で怜に目を凝らした。その目は真剣に光っていた。そして僕は、怜が嘘をつく人じゃないと知っていた。

 怜は言葉をついだ。

 

「遥さんは、『センター』のスパイだわ。……亘平、巻き込むつもりじゃなかった、ほんとうにごめん」

 

怜は僕から視線を外さずにそう言った。説明されても訳がわからなかった。巻き込むというのはどういう意味なんだろう?

 

「遥さんが……ほんとうに遥さんが? 鳴子さんもなのか?」

 

「鳴子さんは違うと思う。遥さんだけ」

 

「……頭が追いつかない、じゃあ、なぜ僕は『センター』に追われた? 追う必要すらないはずだ、処分するだけなら……」

 

 怜は少し戸惑って、口を開きかけたけれど、そのしゅんかん、エレベーターの方から光がさした。

 

「見回りね……もう行くわ。私が知っていることならなんでもあなたに教えるわ。でもいまは……、なるべくはやくこの農場から出て」

 

怜はビジネスリングで時刻をチェックすると、そう言った。あのときと同じアンティークのビジネスリングだ。僕はたぶんあのケンカ別れしたときのように、このまま地上のどこかへ消えようとする怜の腕をつかんで言った。

 

「またどこかで会おう、気をつけて」

 

怜は頷くと自分の行く方向へ首を傾けた。僕は怜の言いたいことを汲み取って小石を拾うと、思いっきり反対方向へ投げた。





第一部にたくさん伏線があったのですでにお気づきの方もあったかとおもいますが

そうなんですよ。。。

これから遥&鳴子シスターズの過去も出ます

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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