マリーちゃんはガルーダに吹き飛ばされて、そのまま地面に叩きつけられた。
マリーちゃんの視線が私達を見つめる。
「ぐっ..。はあはあ...。もぅ..動けない。お姉ちゃん...チカ...にげて...。」
『グルルル...』
二匹のガルーダが上空からマリーちゃんを見下ろす。
私は加護で銃器をつくりだそうと心の中で必死になって思い浮かべた。
(なんで...?どうしてできないの!!)
もっと加護の練習をしてさえいればつくりだせたの?
そしたら二人を守れたの?
「マリー...。なに言ってるニャ...!マリーを残して逃げられるわけないニャ!」
「ぐすっ。お姉ちゃん...。」
メリィはマリーのところまで駆け寄ってギュッと抱きしめた。
抱きしめられたマリーの目から涙が溢れる。
私は彼女達を見つめながら激しく後悔していた。
この世界で楽しく平和に生きていければいい。だから身を守る程度の強さがほしい。
そう思ってた。
でもこんなの...。
「こんなの全然楽しくないよっ!!」
ガルーダがマリーちゃん達に向かって上空から凄いスピードで下降してくる。
私は踏み込んで二人との距離を詰める。二人を抱えて前方に転がるようにガルーダの攻撃を避けた。
すぐに起き上がってガルーダとの距離を詰める。
この大きな翼さえどうにかできれば。
短剣を構えながらガールダの巨大な翼を狙って飛び上がった。
次の瞬間。
ガルーダは翼を広げて体をクルッと捻った。
飛び上がってしまったので避けることができず巨大な翼に弾き飛ばされる。
ガルーダは上空に飛び上がった。
「くっ!はあ...。はあ...。」
立ち上がることができずに膝をつく。
痛みと衝撃で意識が飛びかけた。
なんて重い一撃なの...。
『グルルル...』
『グギャアア!』
このままじゃ誰も守れない..。
なにかできることはないの?
私はこの街で出会ったみんなを守りたいのに!!
私にもっと力があれば、助けることができるのに...。
上空を見上げてガルーダを見つめる。
「誰か助けてよ...。私じゃ無理だよ。」
二匹のガルーダは私達を見下ろし翼を羽ばたかせた。
再び私達に向かって真っ直ぐに下降してくる。
迫りくるガルーダに恐怖を感じ反射的に瞳を閉じる。
死を覚悟した。
── その瞬間。
[チカに持っててほしい。]
突然、彼女との冒険の想いでや別れ際の最後の言葉が脳内を駆け巡った。
ハッとして目を見開く。
── そうだ....。
彼女はどんな状況でも諦めたりしなかった。
ありったけの力を振り絞って立ち上がる。
「お願い。私に力を貸して...。」
瞳を閉じて心の中で強く想い浮かべる。
私をいつも助けてくれた彼女の戦う姿...。
彼女が愛用してた最強の武器。
武器の形状も能力も私が忘れるわけない...。
穂先と柄の先端の両方に、両刃の刃と翼のような形状の刃がついた漆黒の槍。
私が彼女から受け継いだ『憧れの象徴』
まばゆい光が周囲を包み込んでいった。
ガルーダは突如発生した光に驚き攻撃を中断して上空に舞い戻った。
「な、何が起こったのニャ?」
まばゆい光は次第に消えてゆき、漆黒の槍が地面に突き刺さった。
すべての光を吸い込んでしまいそうな絶望的な漆黒。
槍を眺めているだけで恐怖すら感じる。
私は目を開けて目の前の槍を引き抜いた。
あの日。彼女から譲り受けた時と同じように槍からまったく重さを感じなかった。
間違いない。
──私の憧れた彼女の槍だ...。
『グルルル!』
『グギャアア!』
ガルーダは上空から巨大な翼を大きく羽ばたかせて再び襲いかかってきた。
上空を見上げてガールダを睨みつける。
もう誰も傷つけさせない。
あの頃の彼女のように今度は私が...。
「私が二人を守るんだあぁぁ!!」
槍を握った腕に渾身の力を込めてガルーダに向かって投げ飛ばした。
手からはなれた瞬間。
漆黒の槍は目もくらむような白い光と熱を発し、稲妻を纏って疾風のよう飛んでいく。
『グギャッ!?』
上空で飛んでいたガルーダの体を抵抗なくつらぬいた。ガルーダは苦しみながら地上に落下してゆく。
「ガルーダに大穴があいたニャ!!あの槍はどうなってるニャ!?」
「ん...。それにとても綺麗..。」
『グギャアアー!!』
もう一匹のガルーダは慌てて街の外に向きを変えて飛び去ろうとする。
「逃げられないよ。」
彼女の槍が敵を逃したことなんて一度もなかったからね...。
私は上空に飛ばした槍の軌道を見つめる。
槍は自動的に軌道を変えながらもう一匹のガルーダを背後からつらぬいた。
「やったニャァ!!凄すぎるニャ!!」
「ん...。ぐすっ...。まるで絵本にでてくる勇者様みたい...。」
突然全身から力が抜けていく。
えっ...。
なにこれ...。
あー、そっか...。
確かあの槍魔力を...。
私は地面に倒れて意識を手放した。
ー 西の草原 ー
シルバーウルフ討伐隊リーダー
冒険者:アージェ
私は東の草原から討伐隊を率いて急いで街にもどった。だけど悲鳴が響き渡る街の中で、あの化け物達の姿を見て恐怖で逃げ出してしまった。
気づいたら西の草原にいた。
「Aランクの冒険者が聞いて呆れるぜ。」
「肝心な時に震えてるだけでなんの役にも立ちやしねえ。」
街の人達の話し声が聞こえてくる。
私は膝を抱えて顔をうずめた。
好き勝手いって。
あんな化け物勝てるわけないじゃない...。
「おいあれをみろ!」
「ガルーダが!」
ガルーダと聞こえて身体が無意識に震えた。
私はゆっくりと顔を上げて街の方角を見つめる。
夕暮れの街の上空にガルーダが巨大な翼を羽ばたかせている。その背後からまばゆい白い光と稲妻を纏ったなにかがガルーダをつらぬいた。
「おい!!ガルーダが地上に落ちたぞ!」
「誰かが倒してくれたのか!?」
街の人々の大きな歓声が草原に響き渡る。
ほとんどの冒険者が草原に避難していたはずなのに。
いったい誰が?
「誰だか分からないが、あの二匹のガルーダを倒してくれたんだ。この街の英雄だ!!」
「早く戻ってみんなを助けにいきましょ!」
街の人達は明るい表情を取り戻し、街に向かって走り去っていく。
英雄。
私は英雄に憧れて強い冒険者を目指してたはずなのに...。
「ば、ばかな。こんなことをいったい誰が。」
ギルドマスターは驚愕の表情で口をパクパクさせながら街の方角を見つめていた。
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