ギルドからの緊急招集により街にいた冒険者が門の前に集まっていた。
外壁付近ではシルバーウルフの鳴き声と風を切るような激しい羽音が響きわたる。
普段なら夕飯時で賑わう街路には人の姿がない。
ギルドマスターは集まった冒険者達を見据えて、大きく息を吸い込んだ。
「おーし!お前達!よく集まってくれた。これから街の城壁の防衛にはいる!」
冒険者達は恐怖で顔を青ざめながらギルドマスターの方を振り返った。
「いいか!シルバーウルフの討伐隊が合流するまで決して手をだすな!万が一にも城壁が壊されたら終わりだ。もしガルーダに狙われたら西の森の方角に逃げろ!」
冒険者達は愕然とした。
ガルーダの飛行速度は通常の人間の速度では逃げきることは難しい。
速度を加速させる魔法やスキルがあれば可能性はあるが、ニッケルの冒険者達の中にはいなかった。
狙われることは死を意味していた。
「臆するな!!討伐隊もすぐ合流できる!!城壁を守ることだけに専念するんだ!!」
最悪の見落としに誰ひとり気づかぬまま冒険者達は城壁の防衛のために街の外に向かった。
「あ、あの遠くに見えるのがガルーダとシルバーウルフ達か?」
「すごい砂埃だな。」
「おい。シルバーウルフが吹き飛ばされてるぞ...。」
冒険者達は激しく砂埃が舞っている方向を見つめていた。
二匹のガルーダは目がギョロっとした化け物のような顔つきで漆黒の巨大な翼を羽ばたかせ、上空からすごい速度で下降しシルバーウルフに襲いかかり貪り食っている。
「なんだよ。あれ...。化け物じゃねえか。」
「お、おい!!シルバーウルフ達が西の森に逃げようとしてないか?」
シルバーウルフ達は身を隠くそうと冒険者達の前方を横切り西の森へ疾走していく。
「グルルル!」
「グギャァァ!」
ガルーダ達はシルバーウルフ達を追うのをやめて上空を旋回している。
「なんでガルーダはシルバーウルフを追っていかないでグルグル回ってんだ?」
「さあ?デカすぎて森だと上空から捕食できねえんじゃないか?」
「って!!おい!!ガルーダがこっちに向かってくるぞ!?」
ガルーダはシルバーウルフ以上に賢い魔物だ。
獲物を捕食しながら街から出てきた冒険者達も視線に捉えていた。
簡単に捕食できそうな獲物を狙っていたにすぎない。
ガルーダ達は旋回をやめて街に向かって真っ直ぐに飛んで迫ってくる。
冒険者達は動揺し震えながら武器を構えた。
「くそ!!」
「もう覚悟を決めるしかねえぞ!」
「街を守るんだあぁ!!
魔法を得意とする冒険者は杖をガルーダに構えて炎の魔法を放った。
複数の炎が絡み合いながらガルーダの腹部を焼き払うが、巨大な翼を羽ばたかせて上空から凄いスピードで下降してくる。
建物が崩壊するような凄まじい音とたくさんの悲鳴が街の中から響き渡った。
ー 西の森 ー
チカ視点
マリーちゃんと休憩をとるために森の入り口付近まで戻ってきた。
ちょうどいい大きさの岩を見つけたのでそこに二人で座る。
「ん!お弁当もってきた。一緒にたべよ?」
「わぁー!ありがとお!」
マリーちゃんは猫耳パーカーのポケットから可愛らしいネコの絵が描かれたお弁当箱を取り出した。
お弁当を受け取ってフタを開けた。
小さいパンと可愛らしく切られたお肉と野菜が詰め込まれている。
「マリーちゃんが作ってくれたのー?」
「ん!お姉ちゃんに教わりながら作った。」
「そっかー!いいお姉ちゃんだね。」
「ん!自慢のお姉ちゃん。」
マリーちゃんは軽く頷く。
この子ホントかわいいなあー。
お弁当は美味しくいただきました。
マリーちゃんに心も身体も満たされたのでお猿さん狩りを再開した。
このヒートモンキーって赤毛のお猿さんにしか見えないんだよね。
バナナとかあったら食べるかな?
しばらくお猿さん狩りを続けてたら日が暮れ始めた。
ほどよい疲労感もあるし街に帰ろうかな?
メリィちゃんも心配するかもしれないもんね。
レベルも12まで上がった。
お猿さんご馳走さまです。
「マリーちゃん。暗くなっちゃうしそろそろ帰ろっか!」
「ん...。りょーかい。」
「魔力とかは大丈夫??フラフラしたりしない?」
「まだ大丈夫。」
「じゃあヒートモンキーがでてくるし、森の出口の方に歩こっか!」
「ん!また襲われたら大変。」
慎重に周囲を警戒しながら街の方向に進んだ。
結局お猿さんには襲われることなく森の入口付近までくることができた。
あれ?ホーンラビットもいなかったなあ。
朝きた時は何度も遭遇したのに。
まぁこうゆう事もあるかな?
「めずらしい。一度も魔物に遭遇しないで草原にでれそう。」
「あっやっぱりめずらしいことなの??」
「ん。森にホーンラビットはたくさんいる。」
「運が良かったのかもね!どうせなら遭遇しないで草原にでたいね♪」
「ん!初めての体験。二人の良い思い出になる。」
森をでて草原にでた。
やった!
魔物に遭遇しないで草原にでれた!
マリーちゃんも初めての体験で喜んでるかな?
「マリーちゃん!やったね!!」
「......。」
「マリーちゃん?」
あれ?まさかいない!?
後方にいるマリーちゃんのほうへ振り返った。
マリーちゃんは眉を寄せて険しい表情で街の方角を真剣な目つきで見つめている。
こんなマリーちゃんはじめてみた。
「ど、どうしたの?マリーちゃん?」
「あれは鳥?ううん。もっと大きい...?まさかガルーダ?」
何か呟いてる?
ガルーダ?
声が小さくてうまく聞き取れなかった。
「急にどうしたの?」
「ごめん。私いかないと..。チカは草原にいて。街に来ちゃダメ...!」
マリーちゃんは風魔法を使った。
マリーちゃんの身体を包み込むように風が絡みついていく。
「今度は私がみんなを守る..。」
「えっどうゆうこと?マリーちゃん!?」
マリーちゃんは街の方角だけを見つめて凄い速度でかけだしていった。
はやっ!!
あっという間に見えなくなっちゃった。
でもマリーちゃんがあんな反応するなんてよっぽどのことだよね!?
慌てて街の方角へ視線をおくる。
「あれは..。巨大な鳥?街を襲ってるの...?」
夕日に照らされたニッケルの街から複数の煙が立ちのぼり、巨大な鳥が旋回していた。
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