女神様から加護をもらったので、猫耳パーカーを着て楽しく生きていきます!

🌟彼女は絶対に諦めたりしなかった。🌟
よもぎ餅
よもぎ餅

第52話 王都に帰ってきたよ。

公開日時: 2020年9月21日(月) 00:00
文字数:2,159


 瞼を開けてはじめに目に飛び込んできたのは、見覚えのない知らない天井だった。


 窓からそそぐ朝の光の眩しさに目を細めたあと、寝ぼけた意識で寝返りを打つと、シィーが私の左手にもたれ掛かるようにして、スヤスヤと安らかな寝顔を浮かべている。



 ふいに部屋の外から階段を登ってくる足音と床が軋む音が聞こえてきたので、扉のほうへ顔を向ける。


 部屋の外から軽めに数回扉をノックする音が聞こえたかと思うと、私が返事をする間も無くゆっくりと扉が開かれていく。


 メリィちゃんだ。

 私と目が合った瞬間、安堵した表情を浮かべながらニッコリと微笑んだ。

 傍らにはマリアさんが美味しそうな食事を両手に持って付き添っている。


「目が覚めたかニャ?」

「うん。おはよー。」


 メリィちゃんの声で目を覚ましたのか、シィーが目を軽く擦ったあと、両手を上げて可愛くノビをする。


「んっー....。んっ?」


 私に気がつくと、眉をひそめながら疑うような眼差しでジーッと私を見つめたかとおもうと、ピョンっと飛び上がり、なぜか私の頬をペシペシと軽く叩いてきた。


「いたたっ!シィー!急になにするの?」

「おーっ!いつものチカに戻ってるみたいなの。本当に心配したの!」


 そう言って満足そうに頷くと、嬉しそうに私の頬にそっと抱きついてくる。


 一体どうなってるの?


 シイーの反応に戸惑っていると、メリィちゃんが真剣な表情で私を見つめながら、静かに口を開く。


「さてと、チカはどこまで覚えてるのかニャ?」

「どこまで?えーと...。えっ!?」


 迷宮での出来事を思い出して、慌てて自分の胸元に視線をおくると、自分がまったく見覚えがないヒラヒラした可愛らしい服を着ていることに気がつき、恥ずかしさから思わず顔が引きつる。


「ぎゃああああっ!!なにこの格好ッ!!」

「ぷぷっ!私は意外と似合ってると思うの!すごく可愛らしいの!」


 シィーは笑いを堪えるかのように、両手で口元を押さえて小刻みに震えている。


 内心シィーの様子にイライラしながら、胸元まで裾をまくり上げた。


 あのナルシストに背中から胸にかけて貫かれたはずの傷口が見当たらない。

 それどころか傷跡すらない。


「ふふふっ!私に感謝するといいの!」

「じゃあこれはシィーが?」

「そういうことなの!」

「本当によく治せたね...。致命傷だと思ったんだけど。」

「あー...。その。傷口を治したのは私だけど、チカが今生きているのとはあまり関係ないかもしれないの。」


 そう言うと、シィーは気まずげにその瞳を伏せた。


「えっ。どう言うこと?」


 シィーの言ってることが理解できず、おもわず首を傾げる。

 まわりに視線を送ると、みんな押し黙り真剣な表情で私とベットのそばに立てかけられている漆黒の槍を交互に見つめている。


 すごく嫌な予感がしつつも、迷宮で起こった出来事をシィーとメリィちゃんから聞くことにした。



 ことの顛末を聞いて、あまりに衝撃的な話の内容に思わず顔が引きつる。


「そ、それ本当なの?」

「全部本当のことなの。チカ。アイツは誰なの?あの不気味な槍と関係があるの?」


 シィーはブリュナークを指差したあと、私の方へ振り向いてクリっとした可愛らしい目でジーッと私を見つめながら問いかける。

 瞳にはかつてないほど、真剣さが宿っている。


 こっちが聞きたいよっ!!

 だれなのそれっ!!


 ゲームではブリュナークにそんな効果や仕様なんてなかったはずだ。

 じゃあ原因は私自身?

 もしそうだとしたら大問題だ。


 シィーは私の様子を見て心情を察したのか、呆れたように大きく溜息をついた。


「その様子だとチカ自身も全く心当たりがないってことでいいの?」

「う、うん。ごめん。」

「いいの。なんとなくそんな気はしてたの。正直あれは人かどうかも怪しいの。」

「それってどういうこと?」


「加護の力で新たに魔法を創造するなんて、人の身で出来るとは到底思えないの。いくら女神様からもらった力だとしても、人の身では必ず限界があるの。」


「じゃあ...。わたしの中に人ではないナニカがいるってこと?」


「んー。それは私じゃ分からねえの。チカ自身なのか、もしくはその不気味な槍の中にナニカがいるのか...。もしかしたら、ティターニア様なら何か分かるかもしれないの。」


「そっか...。じゃあ行ってみるしかないね。このままにしとくのも怖いし。」


「私もそれがいいと思うの。アレをそのままにしとくのは危険なの。」


 一番怖いのは身体を乗っ取られることだ。

 私より加護をつかいこなし、躊躇なく笑顔を浮かべながら残虐なことをする存在が、私にとっても安全とは決して言い切れない。


「そうかニャー。私にはそうは見えなかったんだけどニャー?あっ!」

「ん?どうしたのメリィちゃん?」


 メリィちゃんはハッと思い出したかのように、両手をポンと叩く。


「そういえば王都のギルドがチカが目を覚ましたら来てほしいって言ってたニャ!」

「・・・・」


 私は無言でベットに寝転び、フトンの中に潜り込んだ。


「ニャ!?急にどうしたのニャ!!なんでまた寝るのニャッ!?」


 だって嫌な予感しかしないだもん。

 殺されかけたとは言え、Aランクの冒険者達の両手足を文字通り跡形もなく消しとばしてるんだよ?

 下手すると捕まるかもしれないじゃん...。



 結局、ずっと逃げ続けるわけにもいかないので、朝食を食べてから嫌々ながらギルドに向かうことにした。


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