女神様から加護をもらったので、猫耳パーカーを着て楽しく生きていきます!

🌟彼女は絶対に諦めたりしなかった。🌟
よもぎ餅
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第96話 朝、目を覚ますと......

公開日時: 2020年11月10日(火) 00:00
文字数:2,296

 翌日。窓辺からの差し込む日差しと鳥の囀りで私は目を覚ました。


 すごく気持ちのいい朝だ。なんだか今日は良いことがありそうな気がする!


 私はベットから身体を起こすと、何気なくドアの方へ視線を向けた。


「へっ......?」


 私の部屋の中は人で溢れかえっていた。ジーッと私を見つめるたくさんの視線が目の前に広がっている。


 怯えた様子で正座をする見覚えのない首輪をつけた人達、心配そうに私を見つめるマリーちゃんと、傍にたたずむジョンさん。それになぜか正座して口をパクパクさせてるエルザさん。


 異様な光景に呆然としていると、シィーが私の目の前まで飛んできた。


「目を覚ましたの!!」


 シィーの言葉を受けて、みんなが私を見つめて息を呑んだのが伝わってくる。


「よーし! 私が確かめてやるの!」


 訳の分からないことをいいだすシィー。


「ん。気をつけて?」

「任せておくの! みんな少し離れてるの!」


 シィーはみんなの方を向いてそう言うと、私の方へ振り返り、眉をひそめながらジーッと私を見つめた。


「ねえ、シィー。一体なにを確かめ──」

「とりゃーっ!!」


 掛け声と共にくりだされたシィーの渾身のビンタが私の頬にクリーンヒット。パチーンっと頬を叩いた音が部屋の中で鳴り響いた。


「痛ったあああああいっ!! シィー!! 急に何するの!?」

「ふっー! どうやらチカで間違いないみたいなの!」

「当たり前でしょ!? 意味がわからないよ!」

「チカ。落ち着いて? 色々大変だった」

「そうですなぁ。さて。チカ様にはどこから話せばいいやら......」


 頬を押さえる私を見つめながら、ジョンさんは静かに昨晩の出来事を語りだした。



 ◆◇◆◇


「えーと......。じゃあ、要約するとエルザさんが暗殺者で。それに怒ったもうひとりの私が、エルザさんの所属してた黄昏って組織を潰しにどこかに出かけて行ったと。そういうこと......?」

「そういうことなの! ミーアって名乗ってたの!」

「そ、それで? そのあとはどうなったの......?」

「正直分かりません。数刻ほどでこの者たちが眠ったチカ様を抱いて屋敷へ帰ってきましたが......」


 そう言ってジョンさんは、首輪をつけた男女たちの方へ視線を向けた。


「じゃあこの人達に聞けばいいんじゃないの?」

「それが......。こちらが何を聞いても、一言も口を開こうとしないのです」

「一言も?」


 それって変じゃない? 不平不満の一言ぐらいでてもいい気がするけど。


 もしかしてあの首輪が原因? ──うん。エルザさんのあの異常な行動を考えると、ほぼ間違いない気がする。


 チカはベットから降りると、エルザの首元につけられた首輪に指先をあてながら『鑑定』を使ってみた。



 奴隷の首輪

 所有者:チカ

 効果:所有者の命令を装着者に強制的に従わせるオリハルコン製の首輪。また、装着された者は所有者に害を及ぼす行動を行うことができない。



 ど、奴隷の首輪......。そういえばこの世界で奴隷って見たことないかも......。


「──ねえ、ジョンさん。奴隷って知ってる?」

「奴隷ですか......? 申し訳ありません。聞き覚えのない言葉です」

「ん。私も聞いたことない。チカ、奴隷ってなに?」

「う、ううん! 知らないならいいんだ!」


 いやよくないか。うん。よくないよね......。どう考えてもこの首輪のことを話さないと話が進まないもんね......。


「あぁー、もうっ! なんで起きたらこんなことになってるの!? ミーアって誰!? 責任だけ私に押しつけるのやめてよ!!」

「でもジョンやミーアがいなきゃ、チカは死んでたかもしれないの」

「うっ......」


 確かにシィーの言う通りなんだよなぁ。ミーアと名乗るもうひとりの私。彼女がいなきゃ今頃私はもう死んでたかもしれない。せめて彼女と会話できたらなぁ。これじゃまるでジキルとハイドだよ。


 とにかく私が昨日何をしたのか、それを把握するのが重要だね! 大迷宮での出来事を考えると、もう嫌な予感しかしないけど......。


「んー、とりあえずこの人達に話を聞いてみるしかないかなぁ」


 私は首輪をつけて正座する集団に視線を向けた。


 年齢も性別もバラバラだけど、みんなエルザさんと同じ黒装束を着てるってことは、この人達が黄昏っていう暗殺集団ってことだよね? 


 私が誰に話を聞くか悩んでいると、可愛い犬耳の女性がひどく怯えた表情でゆっくりと立ち上がった。よく見ると手にメモのようなものを持っている。


 犬耳の女性は私の前まで歩いてくると、震えながら手に持ったメモを差し出してきた。


 彼女の瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。


「これは?」

「............」

「あーそっか。話せないんだっけ。もう話していいよ?」

「──あっ......」

「どう? 話せそう?」

「は、はい!」


 コクコクと首を縦に振る犬耳の女性。怯えてる彼女には悪いけどすごく可愛らしい。


「良かった。それでこれは?」

「えーと。あなたに起きたら渡せって言われました」

「私に?」

「は、はい......。あと......。えーと。私を可愛がってください!!」

「へ......?」


 急にそんなことを言い出す犬耳の女性。


「ご、ごめんなさい!! いまのじゃダメでしたか? わ、私もっとよく考えます! だから殺さないで......」


 ──本当に何したの私!? 


 懇願するような潤んだ瞳でへたり込む犬耳の女性。背後からは「うわ......」とドン引きしたようなシィーの声が聞こえてくる。


 チカは顔を引きつらせながら受け取ったメモをゆっくりと広げた。


『犬見つけました。』


「ふ......、ふざけるなあああ──っ!!」


 チカは大声を上げながらメモを床に思いっきり叩きつけた。


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