馬車は王都の城壁にある門に向かって走る。
「ふぅー。やっと王都についたね」
「ん。でももう少し時間かかるかも」
「えっ? なんで?」
「門で検査があるから」
「あぁー。なるほどね」
ニッケルの街でもしてるもんね。王都なら門兵さんの検査を待ってる人達が多いのも当たり前か。
「ぎゃあああ!! 落とし穴なの!」
私がマリーちゃんと話していると、シィーが頭を抱えながら大声で叫び声をあげた。
「はぁ……。シィーずっとやっててよく飽きないね」
「だってこれ凄く面白いの! ねぇねぇ! 他にはないの?」
「あぁー……」
確かに加護でつくりだせるなら他にもある。元の世界で私が持ってたソフトはそれ一つじゃなかったからね。
「あーッ!! チカのその反応! 他にもあるとみたの! ねぇねぇ。お願いだからもっと作って?」
シィーは瞳をキラキラ輝かせながら甘えるように私の胸に抱きついてきた。
うぅっ。すごくかわいい。だけど作っちゃうとこのままだとずーっとゲームしてそうなんだよなぁ……。
「ねぇ。チカお願いなの」
「うぅっ……。でもつくれるか分からないよ? 部品や内部の作りは一緒だろうからできない可能性のが高いかもよ?」
「じゃあやってみればいいの!」
「ん……。私からもお願い」
「わわっ!!」
マリーちゃんまで私を見つめながら腕に抱きついてきた。
胸にシィー。隣にマリーちゃん。これはずるい! 卑怯だよ! こんなの断れるわけないじゃん!
はぁ……。もうとりあえず試してみるか。それでダメだったら二人も諦めつくだろうし。
私は手のひらを広げて、持っていたパズルゲームのソフトを思い浮かべた。
「おおっー!! やったの! ちゃんとでてきたのっ!!」
そう言うと、シィーは興奮しながら凄いスピードで私からソフトを奪っていった。
「あっ! シィーちょっと待ってよ!」
「いやなの! 待てないの!」
シィーは両手でゲームのソフトを大事そうに抱え込む。
どんだけゲームが大事なの!? これはちゃんと言わないとダメだ。このままじゃシィーがゲーム廃人になってしまう。
「シィー。あまりやりすぎるなら私にも考えがあるからね?」
「な、なにするつもりなの?」
「壊して元に戻せないように、バックにずっとしまっちゃうからね」
「「ひぃ……ッ!!」」
シィーとマリーちゃんは絶望したような表情で私を見つめた。
「わ、わかったの。気をつけるの」
「ん……。気をつける。だからやめて……?」
これじゃまるで私が二人をいじめてるみたいじゃないか! なんだかすごく心が痛いよ!
「……ん? なにこれ?」
ふと床を見ると二つに折られたメモ用紙みたいなのが落ちてることに気がついた。
気になってメモ用紙を拾って中を見てみると──えっ。これ日本語だ……。えーと。なになに。
メモ用紙の中身を読んでおもわず自分の顔がひきつるのを感じた。
「ん? それはなんなの? なんでチカは固まってるの?」
私の異変に気づいて飛んできたシィーが、私の肩にちょこんと座って覗きこんでくる。
「んー? どこの言語なの? 初めてみるの。なんて書いてあるの?」
「えーとね……」
ーーー
チカちゃんへ。
ずーっと見てたけど、ゲームは面白くて私も好きなので特別にオッケーだしちゃいます!
私に感謝して崇めなさい?
ぷぷっ!この手紙を見たときのチカちゃんの反応を楽しみにしてます。
寛大で慈愛に満ちた女神より♡
ーーー
「さすが女神様なの! これで色々なゲームで遊べるの!」
私は最悪の気分だよっ!! 宿屋であった時みたいに、私の様子を見て楽しそうに笑ってるミリアーヌさんの姿が目に浮かぶよ!!
「はぁ……。なんだか胃が痛くなってきた……」
◆◇◆◇
城壁の門までくると、マリーちゃんの言う通りたくさんの人達が王都に入るために順番待ちをしていた。
1時間ぐらい待ってやっと私達の順番がきたのか、門兵のおじさんが馬車に近づいてきた。それを見て運転席からジョンさんが降りていく。
「馬車に乗ってるのはこれで全員か?」
「さようでございます」
「王都への目的は? どこからきたんだ?」
「王都の冒険者ギルドに用事がございまして、ニッケルの街から参りました」
「そうか」
ジョンさんはニコニコした笑顔で門兵のおじさんの対応する。門兵のおじさんは手元の水晶をチラッと見る。
「よし! もういっていいぞ。いま王都は勇者様がいるのもあってすごく賑わっている。お前ら問題を起こすんじゃないぞ?」
「ありがとうございます」
ジョンさんは軽くお辞儀をすると運転席にもどり王都の中に馬車をゆっくり走らせた。
窓から王都を眺める。
石造りで階層が高めの建造物が建ち並んでいる。驚いたことにガラスが張られて、外から商品が見えるように展示しているお店まであった。
「王都はオシャレなお店が多いんだね?」
「ん。昔の勇者様の影響」
「へえー! やっぱりそうなんだ」
思ってたより昔の勇者が生きてきた時代って私がいた時代に近いのかもしれない。
窓から外を見ていると、見慣れた絵が描かれた看板を見つけた。
「えっ! あの看板の絵って、もしかしてケーキじゃない!?」
「ん? そうケーキ。王都で売ってるよ?」
「おおおっ!!」
まさかこの世界にケーキがあるなんてっ!! 昔の勇者様本当にありがとうございます!!
「マリーちゃん!! メリィちゃんと合流したら、絶対にあとで一緒に行こうね!!」
「う、うん」
マリーちゃんは一瞬ビクッと肩を震わせて目を丸くして驚いている。
「あっ! 驚かせちゃってごめんね」
「ん。大丈夫。そんなに好きなの?」
「うん! わたしケーキが大好きなんだよねぇー! 二度と食べられないとものかと思ってたから凄く嬉しい!」
「ん! よかったね」
しばらくすると馬車が王都の冒険者ギルドに到着した。
「みなさん冒険者ギルドに着きました。馬車はマリアに任せてありますので、私について来てください。」
馬車を降りてジョンさんの後に続いてギルドの中に入る。
ギルドの中に入ると冒険者達の視線が私達に集中する。
「少しここでお待ちください。私がメリィお嬢様がいまどちらにいらっしゃるか聞いてきますので」
「ん。わかった。ジョン爺お願い」
「お任せください」
ジョンさんはそう言うと受付カウンターに向かって歩いていく。
〈おい!なんだあいつら。おかしなネコの格好してやがる。〉
〈ふふっ。そんなこと言ったら可哀想よ。小さくて可愛い子達じゃない?〉
〈ここはいつから子供の遊び場になったんだ?〉
〈ぎゃはは!ネコが襲撃にきたぞお!みんな逃げろおお!〉
周りにいる冒険者の話し声や馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる。
冒険者のお姉さん。小さくて可愛いって言われても私は全然嬉しくないんだよ?
それにしても王都の冒険者もニッケルのギルドと同じみたいだ。
冒険者のことが嫌いになりそうだよ。
『そんな馬鹿な!?』
突然、ドンっ!とテーブルを叩くような大きな音とジョンさんの叫ぶような大声がギルド内に響き渡った。
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