ノベリズムの仕様が少し他と異なるため、少しづつ改稿していきます。
ー 東の草原 ー
シルバーウルフ討伐隊リーダー
冒険者:アージェ
「はぁ....はぁ...くっ。」
体勢を崩し膝をつきかけるも、大剣を地面に突き刺してなんとか身体を支えた。
周囲の冒険者に視線をおくる。
半数がすでに戦える状態ではなかった。
怪我人が多いわね...。
「レナード!治癒ポーションの在庫はあとどのくらい?」
「もう残り数本しかねえな。どうする?」
「じゃあレナードは一度状況をギルドに報告して治癒ポーションの補給と低ランクでもいいから応援を要請をしてきて!低ランクでも怪我人ぐらい運べるでしょ。」
「わかった。すぐもどる。アージェ!どうにか持ち堪えてくれ!」
「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの?」
レナードは愛想笑いを浮かべたかと思うと街に向かって走りだした。
私は討伐メンバーが戦闘を続けている方向に視線をもどした。
あと数十匹ってところかしら。
討伐メンバーを見つめながら大きく息を吸い込んだ。
「前衛は戦線を押し上げろ!!怪我人を後ろにさげて応援と補給が来るまで無理は...」
『グルルル...。』
「おい。今の聞こえたか?」
「誰かの腹の鳴った音じゃねえか?」
「いやそれにしちゃデカくなかったか?」
討伐メンバーはざわめきながら周囲を警戒する。
なにいまの?
私は警戒しながら辺りをうかがった。
異変はないわね..。
「おい!!シルバーウルフどもが!!?」
シルバーウルフ達がいた方向に視線をおくる。
すべてのシルバーウルフが討伐メンバーとの戦闘をやめて私のいる方向に走ってくる。
「うわっ!」
「どうなってんだ!?」
なにが起こってるの?
私は状況が理解できず困惑する。
奴らの目的は私達?
賢い魔物なのは知っていたけど。
まさか指揮系統を理解しているっていうの!?
私はすぐに大剣を地面から引き抜き構えをとった。
「おちつきなさい!私達だけで凌ぎ切る!前衛はすぐこっちに戻って合流しろ!」
近くの討伐メンバー達は一瞬ハッとした表情をしたが、慌てて向かってくるシルバーウルフ達に武器を構えた。
「えっ?」
こちらに向かって走ってきたシルバーウルフ達が私達も素通りしていく...。
目的は私達じゃない?
すぐに我に返り振り返る。
まずいあっちの方向は!!
「おいあっちは街の方向だぞ!?」
「アージェさん!!すぐに追いかけましょう!」
他の討伐メンバーは焦った表情で騒ぎだす。
私は街のある方向を眺めながら、一度大きく深呼吸をして状況を整理することにした。
街は城壁があるからしばらくは大丈夫なはず。
それに私達はすでに長時間の戦闘で疲弊している。
この状況で無策に追うのは自殺行為だわ。
私は後方にいる冒険者達のほうを振り返った。
「街は城壁があるからまだ大丈夫だ!みんな一度体勢を立て直してから追うぞ!!」
他の討伐メンバーも状況を理解したのか怪我人の治療や移動の準備に取り掛かりはじめた。
「ん?急に暗く..?」
「うわっ!!!」
「ぐっ!!?」
太陽の光が遮られたかのように暗くなった。
次の瞬間。
砂混じりの激しい風に身体が吹き飛ばされた。
「くっ...。」
私は痛みに耐えつつ身体を起こした。
辺りを見渡そうとするが砂埃に覆われていてよく見えない。
いったいなにが...。
「グギャァァー!!!」
魔物!?いったいどこに?
慌てて武器を構え鳴き声がした方向に振り返った。
二匹の黒い鳥のよう魔物が街の方向に飛び去っていく。
私達は今あいつらに吹き飛ばされたの?
それに...。
「あの姿形に..あの大きさ...。まさかガルーダ?」
街の城壁付近でガルーダがシルバーウルフを捕食しようと暴れているため街中が大騒ぎになっていた。
ー 冒険者ギルド ー
受付担当:メアリー
ギルドの休憩室でボロボロで倒れていたレナードさんが目を覚ました。
それに気づき慌てて彼に駆け寄る。
「うっ..。ここは?」
「ギルドの休憩室です。いったいなにがあったんですか?」
「俺はギルドに状況報告と応援要請をするために街にもどっていたんだ。街までもう少しってところで、本隊が戦っているはずのシルバーウルフの集団が後方から現われた。なぜか奴らは俺を襲ってこなかったから不思議に思っていたが、上空からきた二匹のガルーダを見てその理由がわかった。奴らはガルーダから逃げてたんだ。」
「ではレナードさんは、ガルーダがシルバーウルフを捕食しようとしたところに巻き込まれた。そういうことですか?」
「ああ..。ガールダに街の方向に吹き飛ばされたおかげでなんとか逃げてこれた。」
私はレナードさんの話を聞いて状況を理解した。
やっぱり調査隊をおくるべきだったのよ!
もし城壁が崩されたら街も私達も..。
最悪の未来を想像して無意識に身体が震えた。
こうしちゃいられないわ!
すぐに報告して対策と他の街のギルドにも救援要請をしないと!
私は慌てて休憩室をでた。
ギルドマスターがいる部屋についた。
息を少し整えてから部屋のドアを叩く。
部屋のドアを開けて、椅子に座るマスターに現在の状況を報告する。
「なに!?街の城壁付近にガルーダとシルバーウルフだと!?」
「はい。状況からの推測ですが。シルバーウルフはガールダから逃げるために本来の生息地から草原まで移動してきた可能性が高いです。」
「他の討伐メンバー達はどうした!!」
「生死不明です。無事だとしてもシルバーウルフの数も予想以上だったようなので、長時間の戦闘で疲弊しているかと。」
ギルドマスターは机に座ったまま頭を抱える。
私は内心呆れながらマスターを見つめる。
だからまずは調査隊をおくるべきだといったのよ!
そうすれば尋常じゃない魔物の大量発生をみて異変に気づき予測できたかもしれないのに!
ガルーダも血のニオイと草原での戦闘で気づいてシルバーウルフ達を追ってきたに違いないわ。
「メアリー!残りの冒険者を全員街の門に集合させろ!!緊急招集だ。」
「どうされるつもりですが?」
「討伐するに決まってるだろう!!!」
「無謀です!ガルーダはAランクの魔物ですよ?いま街にはBランク以下の冒険者しかいません。それに下手に刺激を与えて街を襲われたらどうするんですか!!」
「だまれ!城壁を防衛している間に討伐隊もきっとすぐ戻って合流してくる。討伐はそれからだ!最悪誰かを囮につかって街から引き離せば、なんの問題もない!俺に指図するな!!」
「そんな...。囮になんて誰がなるんですか!他の街のギルドに救援を要請すべきです!」
「そんなもの必要ない!!お前は俺の言うことを聞いてればいいんだ!」
ギルドマスターは顔を真っ赤にして怒鳴りながら部屋をでていった。
無茶苦茶だわ。
疲弊した討伐隊が合流したところで二匹のガルーダを倒せるとは思えない。
そもそも彼等はあの筋肉バカのせいで、Aランクの魔物と戦ったことすらないじゃない。
Aランクの実力があるとは思えない。
私は急いでギルドマスターを追いかけた。
必死に作戦の変更を進言したが、聞き入れてもらえることはなかった。
「もう仕方ないかな...。最悪仕事を失うかもしれないけど、街を壊滅させるわけにはいかないわよね。」
自分だけでも逃げようかとも考えた。
けどずっとこの街の出来事を後悔しながら生きていくなんて私には耐えられない。
私はギルドの通信魔道具を手に取った。
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