シィー、メリィ、チカの三人は妖精城の客室で各自ゆっくりとした時間を過ごしていた。
「ん──っ!」
そんな中、チカはソファーに座りながら、猫耳パーカーの鑑定画面と、にらめっこをしていた。
──牢獄で使った力が改変なのは間違いない。自由に作り変えたりできるわけじゃないけど、創造より扱いやすそうだ。なんとか猫耳パーカーを強化できないかなー......。
チカは猫耳パーカーに触れながら、試しに『絶対に壊れない』に改変を試みたが、猫耳パーカーに変化は起きなかった。
──やっぱりだめかー。そりゃそうだよね。壊れない服なんて、言い換えれば、どんな攻撃も絶対に通さない最強の防具だもんね。
「何をやってるのニャ?」
「あっ、メリィちゃん。いや猫耳パーカーを加護の力で強化できないかなーって思ってさ」
「それが上手くいかないってところかニャ?」
「そうなんだよね。というか、まだどうすれば強化できるのか分からないって段階かなー」
「にゃるほどニャー。チカから話を聞いた限りだと、創造も改変もチカの認識と創造力が可否を分けてるみたいだから大変そうだニャ」
「えっ、認識?」
「そうニャ。んー、例えばあの不気味な槍がいい例ニャっ!」
「というと?」
「鉄の槍とあの不気味な槍はチカにとっては、別の武器って認識なんじゃないのかニャ?」
「そりゃそうだよ。全然違うじゃん」
「だけどニャ? 人によっては同じ槍だし、同じ武器ニャ。例えば小さな子供が見れば、色が同じなら、どちらもただの黒い槍ニャ」
「ふむ」
──確かにそうかもしれない。いままでこの世界にないものを創りだせる能力って考えてだけど、私の認識も関わってくるのかも。
「なるほど。じゃあそもそも私ができないって思ったことは、改変も創造でもできないってことか」
「だと思うニャ! そういえば、もう1人のチカは魔法すら創りだしてたけど、チカにはあの魔法は使えないのかニャ?」
「それシィーにも言われたんだけど、使えないんだよねー。ステータス画面にもでてこないや」
──光を収束させて放つ魔法なんて、私の使ってみたい魔法ランキング1位なんだけどなー......。
メリィは腕を組みながら少し考えた後、ハッとして両手をポンと叩いた。
「こういうのはどうかニャ? 『魔力を使うことで一時的に強度が増していく』 これなら絶対出来そうな気がするニャ!」
「おーっ! ちょっと試してみるね!」
チカは再び猫耳パーカーに触れると、メリィに言われた通り、『魔力を使うことで一時的に強度が増していく』という効果がつくように改変を試みた。
「本当だっ! できたよっ! さすがメリィちゃんだ!!」
「よ、よかったのニャっ! あとは徐々に魔力が回復するとかも、つけちゃえばいいのニャっ!」
「なるほどっ! その手があったかっ!!」
メリィは、チカが嬉しそうに改変を使っていく姿を温かい目で見つめながら、内心で成功してしまったことに驚いていた。
──本当にチカの認識次第で、なんでもできちゃうみたいだニャー。私じゃどうして魔力で強度が増すのか考えちゃうから、絶対に成功しないだろうニャー......。
「できたあああ──っ!!」
猫耳パーカー(黒)
効果:可愛らしい猫を模したパーカー。小型収納ポケットつき。魔力を込めることで一時的に強度が増加していく。着用していると徐々に魔力が回復する。
「ふはははっ!! これで私も最強だああっ!!」
テンションが上がって高笑いをしているチカの姿を、シィーは呆れた顔で見つめながらぽつりと呟いた。
「チカのやつ。攻撃で大量の魔力を使うことを絶対忘れてるの。──あれじゃ結局ポーションを飲む量が増えるだけなの......」
◆◇◆◇
日も暮れて夕食の時間になったので、私たちは妖精城の食堂に案内された。
食堂に入ると、長いテーブルの中央にティターニア様が座っていた。ミリアーヌさんはいないから帰っちゃったのかな?
初めての妖精料理を美味しくいただいて、一息ついた頃、ティターニア様がシィーを見つめながら口を開いた。
「そいえばシィーちゃん。頼まれてたゲーム機とソフトの複製が終わったわよ?」
「わーっ! ありがとうなのっ!」
「とりあえず10個複製したんだけど、足りるかしら?」
「十分すぎるの! とりあえず5個で大丈夫なのっ! 残りは......」
そう言うと、シィーは横目で私にチラッと視線を送ってきた。ティターニア様や他の妖精達にも遊ばせてあげたいんだなーとすぐ気づいたので、大丈夫っという意思を込めて私はコクリとうなずいた。
シィーはそれを見て、嬉しそうにニッコリと笑いながら、
「残りはあげるのっ!! みんなで仲良く遊んでほしいの!」
「ふふふっ。ありがと。シィーちゃんは少し見ない間にずいぶんと成長したのね」
「テへへっ! ティターニア様にそんなこと言われると、なんか照れるの!」
チカは可愛らしく照れるシィーの姿を見て、笑みをこぼしながら、ふとミリアーヌさんがきたせいで、途中になっていた先程の話題を思い出した。
「そういえばさっき話してた、ありえないってどういうことだったの?」
「そのことですか......」
「もしかして、ミリアーヌさんに口止めされちゃった?」
「いえ、そういうわけではないのですが......。──そうですね。貴女は知っておくべきなのかもしれません。しかしあくまでこれから話すのは当時の私の知っているミリアーヌ様です。今のミリアーヌ様が、なにをお考えなのかは分かりません。それでもよろしいですか?」
ティターニアの真剣な眼差しに、周囲の空気が張り詰めていくのを感じて、チカは息を呑み込む。
「うん。それでもいいから教えて? 私も連れてこられた理由が、もし別にあるなら知っておきたい」
「──分かりました。しかし少し長くなります。飲み物を用意させましょう」
テーブルに飲み物が用意されると、ティターニアはゆっくりと過去について語りだした。
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