ソファーに座り、頭を抱えているチカを見つめながらティターニアはクスリっと笑みを浮かべた。
「ふふっ。そんな気にすることないわ」
「気にするよっ!! 血に飢えてる武器って怖すぎるじゃん!」
「そうね。──だけどその意思に、救われてきた命もあったんじゃない? チカちゃんも含めてね」
「うっ......」
──確かにブリュナークは、私も含めて多くの命を救ってきたのかもしれない。ブリュナークがなきゃ、ガルーダに勝つことはできなかったし、ブルードラゴンと戦うこともできなかったもんね......。
「武器は命を削り奪うもの。『殺意』は武器の起源であり根源。結果なんて使い手次第なのよ」
「おー......。なんか深い話だね」
「ふふっ。年の功ってやつかしら? それにしても......。この武器。ホント凄いわ」
「そんなに?」
「えぇ。この世界最強なんじゃないかしら」
「うげっ!?」
「ぷっ。あはははっ!! なにその顔っ!」
「そんなに笑わなくてもいいじゃん!」
「ふふっ! ごめんなさいね。あまりに面白い顔をするものだから。ふふっ......」
ティターニアは目を細めて、漏れでる声を堪えるように、片手で口元をおさえた。
──なんだか一瞬、ティターニア様がシィーに見えたよ!? 案外二人って似た者同士なのかも。っていうか......。
「もうっ!! 笑いすぎ!」
「ふふふっ。失礼しました。──さて。この武器に問題があるとしたら......。意思じゃないわね。纏う神気、それに......。存在自体だわ」
「へっ?」
「チカちゃんにとって思い入れが強いのは分かったわ。でも......。実際に触ったこともなければ、武器の成り立ち、作り方、意思についても知らなかった。それで間違いない?」
「う、うん」
──だってゲームだもん。材料を集めれば自動で作れたし、武器の詳細は説明文に書いてあったことしか、私には分からない。
「カエデの『創造』はね。知識や認識が足らなければ、創りだせることができなかったわ。この意味が分かるかしら?」
チカは思いを巡らせた。
ティターニアの真剣な眼差し。そして発した言葉の意味を。
考えた末に、1つに可能性に行き着く。
「──それは触ったことがあるモノでも?」
「その通りです」
「でもミリアーヌさんは......」
「そう。カエデもミリアーヌ様から説明を受けたと、以前私に話してくれました」
「まさか?」
「えぇ。触ったことがあるモノや思い入れが強いモノは創れるとは言ってませんでした。それどころかカエデは、元の世界で普段から使っていた物でさえ、創りだすのに苦労してたわ。──だけどチカちゃん。貴女は違う......。触ったことがあるものどころか、この武器は神気まで纏ってるもの」
「私とカエデさんは加護の効果が違うってこと?」
「さあー? それはミリアーヌ様しか分からないわ。だけど何かを隠している。そんな気がするわ。それがチカちゃんの記憶の欠落や、もう一人のチカちゃんと関係があるのか分からないけどね」
「──やっぱりミリアーヌさんに聞いても教えてくれないと思う?」
「おそらくね」
「そうだよねー......」
──ミリアーヌさん。ただの駄女神じゃなかったんだ......。私に一体なにをしたんだろう? そもそも連れてきた目的はなに? ねえ。また私を見てるなら、お願いだから答えてよ。
チカは虚空を見上げながら、心の中でミリアーヌへ想いを叫び続けた。
◆◇ ◆◇
「あーあーっ! まったく! ティターニアったら、余計なことをチカちゃんに言っちゃって!」
ミリアーヌは、天界からチカとティターニアの様子を眺めながら、ため息をついた。
「まっ、いっか♪ 結果は変わらないし!」
ミリアーヌは満面の笑みを浮かべながら、チカを見つめて、
「ぷぷっ! チカちゃんたら、あんなに必死に私を呼んじゃって。 もうっ! ホント可愛いんだからー♪」
チカの心の叫びを聞きながら、ひとしきり笑った後、ミリアーヌは瞳をゆっくり閉じると、小さく息を吐き、真剣な眼差しでチカを見つめなおした。
「ふふっ......。貴女は簡単に死なないでちょうだいね」
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