簡易テントでアージェさんが用意してくれた簡単な昼食を食べた私達は、マサキさんを救援するために大迷宮に足を踏み入れた。
マリーちゃんにはめちゃくちゃ怒られました。やっぱり隠し事はよくないね。それにしてもなんでバレたんだろ? なぜかマサキさんの職業が遊者になってることまで知ってたんだけど......。
「コラっ!! フィルネシアっ!! 私からもっと離れるの!!」
「嫌なのです!! 私に黙って大迷宮に行こうとしたんだからこれぐらいのこと許してほしいのです!」
私の肩の上で騒いでるのはシィーとフィーちゃんだ。フィーちゃんはホントにシィーのことが大好きだよね。
「それともシィルフィリアちゃんはあれだけマリーに怒られたのに反省してないのですか?」
シィーの視線が自然とマリーちゃんの方へ。ご機嫌斜めなマリーちゃんはシィーの視線にジト目で答えた。
「......そうなの?」
「そ、そんなことはないの!! 黙ってたのは悪かったなぁーって思ってるの!」
「じゃあこれぐらい許してほしいのです! ねっ! マリー?」
「ん。全部フィーちゃんのおかげ。シィーちゃんはそれぐらい許してあげるべき」
どうやらマリーちゃんはフィーちゃんの味方らしい。......って。
「ちょっと待って! フィーちゃんがマリーちゃんに教えたってこと!? フィーちゃんがなんでそんなこと知ってるの!?」
「愛の力なのです!!」
シィーに抱きつきながら平然とした顔で嘘をつくフィーちゃん。
いくら鈍チンの私でも愛の力じゃないことぐらい分かる。
「うぎぎっ......。やっぱりフィルネシアのせいだったの......。そうやって小さい頃からいつもいつも私の邪魔をして......」
「ん〜? シィルフィリアちゃん。何か文句でもあるのです?」
「なんでもねぇーの!!」
小さい頃からこんな感じなんだ......。あー、でもそういえばシィーが何処に遊びに行ってもフィーちゃんが追いかけてくるからマリーちゃんと契約させたくなかったって言ってたっけ。
シィーも色々大変だったんだなぁ......。
◆◇◆◇
なんだかんだであっという間に10階層。
召喚されたワンちゃんにブリュナークを放り投げてワンパンで倒した後、すぐに隠し部屋を開くギミックを起動!
もうこの手順は二度目だし慣れたもんだ。まぁ、初見のマロンさんとアージェさんはビックリしてるみたいだけど。
「こんなところに隠し部屋があるなんて......。チカさん! ギルドには報告はしてあるんですか?」
「え? どうなんだろう? 前回潜った時は、ブルードラゴンとの戦闘中に後ろから刺されちゃって、気付いたらベットの上だったからなぁー」
あの冒険者達の名前はなんて言ったけ? 顔は覚えてるけど名前がでてこないや。エースとロメオとかだっけ? 砂漠の風とかいう厨二くさいパーティー名だったことだけは覚えてるんだけどなぁ。
「......そうでしたね。レオンとジェーソンめぇ。チカさんにふざけた真似を......」
あっ、全然違った。誰だよ!! エースとロメオって!!
「まぁ、でもこの隠し部屋はあまり公開しない方がいいと思ってるんだよね」
私の言葉を受けて、アージェさんは首を傾げる。
「どうしてですか?」
「だってこの隠し部屋から転移しちゃったら、ある程度実力がないと戻ってこれなくなるよ?」
「それは仕方ないのでは? 己の実力も分からず挑んだその冒険者の自己責任です」
「えっ? そういう感じなの?」
アージェさんの意見に同意するようにマリーちゃんもウンウンと頷いている。
「ん。冒険者は自己責任が基本」
どうやら冒険者とはそういうものらしい。かと言って報告しなければいけないと言うわけでもないみたい。情報に対する報酬はもらえるみたいなので帰ったらギルドに行ってみようかな?
「......さてと。じゃあそろそろ最下層に向かおっか! みんな準備はいい?」
「「「「「お──っ!!」」」」」
あれ? マロンさんだけ返事がない?
「マロンさん大丈夫?」
「はぃ......」
あー、なるほど。怖がってるのか。迷宮は初めてって言ってたもんね。
「貴様あぁぁ〜......。この期に及んでどこまで私の顔に泥を塗れば気が済むのだッ!!」
「ひゃっいっ!! 大丈夫ですっ!! こんなの全然平気です!!」
マロンさんは元気よくそう答えると、隠し部屋の中に走って行ってしまった。
「あっ!! マロンさん駄目ッ!! ひとりで部屋の中に入ったら起動しちゃう!!」
「ふぇ?」
キョトンとした顔でマロンさんがこちらに振り返った瞬間、転移トラップが起動して隠し部屋がまばゆい光を発した。
「あちゃー。遅かったかぁ......」
「チカさん!! 隠し部屋がただの壁に戻ってしまったのですが、これはまさか?」
「......うん。また犬を倒すところからやり直しだね。ただ一度倒すと少し時間をおかないとボスがでてこないから、扉の外で待機するしかないかなー」
私がそう説明すると、アージェさんは握りしめた大剣をプルプルと小刻みに震わせながらうつむいた。
「時間......ですか。ちなみにどのくらい待てばいいんですか......?」
「えーと。1時間......かな?」
「............」
── あっ。これヤバイかも......。
「あの〜......アージェさん......?」
『あのバカ犬があああああああ──ッ!!』
アージェさんは怒声を上げながら大剣を地面に思いっきり叩きつけた。
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