早めに夕食を食べてから、マリアさんにバレないように窓からこっそりと外にでる。
出発前に回復アイテムとかの補充をしておこうかな?
迷宮でなにがあるか分からないしね!
「マリーちゃん!ポーションとかをしっかり補充してからいかない?」
「ん。準備は大事。ついてきて?」
マリーちゃんは私の手を握って、王都の雑貨屋まで案内してくれた。
「ここなんてどう?」
「おー!いいね!」
雑貨屋の外観を眺める。
石造りで2階建ての普通の雑貨屋だ。
ネコじゃない!
「ん。じゃあ私は食料を買ってくる。」
「りょうかい!じゃあ私はポーションを買ってくるね。」
すこし店内を歩いていると、ポーションの置いてあるコーナーはすぐ見つけることができた。
治癒ポーションと魔力回復ポーションを買い込んでバックにしまう。
シィーのおかげで魔力を過剰に摂取しても、大事になることはなくなったしね。
ものすごく気持ち悪くはなるからできるだけ避けたいけど...。
「チカ~。これも入れて?」
「ん?」
マリーちゃんの声がした方を見ると、マリーちゃんが両手いっぱいに大きな紙袋を抱えてフラフラしながら歩いてくる。
抱えている紙袋が大きすぎて横から覗くようにして私を見つめる姿が可愛らしい。
「わわっ!!マリーちゃん大丈夫!?」
「ん...。平気。よいしょっ...。」
マリーちゃんは紙袋をゆっくりと床に置いていく。
気になって紙袋の中を覗き込むと、たくさんの食料が全ての紙袋にぎっしりと詰め込まれていた。
「こんなに買ってきたの!?」
「ん!お腹減ってるかもしれないから!」
「そ、そっかー...。」
お姉ちゃん想いなのは良いことだけど、いくらなんでも買いすぎなんじゃ...。
メリィちゃんって小食だったよね?
このままにしておくわけにもいかないので、食料をバックにドンドンしまっていく。
「ふっー...。これで全部だね。じゃあそろそろ行こっか!あまりゆっくりしてるとジョンさん達が気付いて追いかけてくるかもよ?」
まあ私としてはジョンさんが一緒にきてくれたほうが安心なんだけどね。
「ん。大丈夫。すぐにはバレない。ねっ!シィーちゃん。」
「えっ?」
なんでそこでシィーがでてくるの?
横目で私の肩に座っているシィーを見る。
シィーはドヤ顔で得意げに胸を張る。
「ふふふっ!チカ安心するの!私とマリーが協力して手は打ってあるの!」
「いったいなにをしたの?」
「ん。これを3人分ベットに置いてきた。」
マリーちゃんは猫耳パーカーのポケットから人型の大きなぬいぐるみを取り出して私に見せてくる。
なんとなく顔がマリーちゃんと似てる気がする。大きさはマリーちゃんとほとんど一緒だ。
「いやいやっ!!これじゃすぐバレちゃうよ!!」
「絶対バレねえの!」
「ん。バレない。」
おもわず首を傾げる。
マリアさんもジョンさんも子供じゃないんだから気づかないわけがない。二人のこの妙な自信は一体どこからくるんだろう...。
「ねえ。なんでそんなに自信満々なの?」
「ふふふっ!こういうことなの!」
シィーはマリーちゃんの手に握られているぬいぐるみに向けて手をかざす。
ぬいぐるみが淡い光に包まれて、徐々にマリーちゃんそっくりに変わっていく。
「ええええっ!?」
淡い光が消えるとぬいぐるみの姿はマリーちゃんと見分けがつかないモノに変わっていた。
澄まし顔のマリーちゃの手に握られて、うつろな瞳でぶら~んとしてるぬいぐるみマリーちゃん。
「うわっ...。」
おもわず顔がひきつる。
本当にマリーちゃんにしか見えない。
そっくりすぎて不気味だよこれ。
夜中に一人で見たらおもわず悲鳴をあげてしまうかもしれない。
恐る恐るぬいぐるみに触れてみる。
間違いなくぬいぐるみだったはずなのに、肌触りがぬいぐるみとは思えない。
肌の温もりすら感じる。
「ぷっ!アハハっ!チカが面白い顔になってるの!」
シィーが私をみて無邪気に笑う。
こういう時のシィーはホントにタチが悪い。
「まあこのシィー様にかかればこんな事は造作もないの!2、3日はバレないの!」
「ん!さすがシィーちゃん。」
二人は仲良さげにハイタッチをする。
私は顔をピクピクと引きつらせながら、呆れ顔で二人を見つめる。
ゲーム機のときも思ったことだけど、二人とも限度を知らなすぎる。
『混ぜるな危険。』
この言葉が二人にはピッタリかもしれない。
「ね、ねえ。シィーこれってどうなってるのかな?人肌の感触と温《あたた》かさまで感じるんだけど。」
「精霊魔法でぬいぐるみを魔力で覆ってるの!見た目もそっくりに変えて温度まで再現したの!」
確かにこれならバレないかも知れない。
だけどこれって...。
「ねえ...。これ朝になってから大騒ぎになるんじゃないかな?」
「ん?どうして?」
「どうしてなの?」
二人とも不思議そうにコテンっと可愛く首を傾げる。
「だってこのぬいぐるみって動いたり喋ったりするわけじゃないんだよね?」
「その通りなの!近くにいれば動かすぐらいならできるけど、離れた場所から動かすことはできないの!」
「ん。チカ。なにが問題?」
「ジョンさん達からしたら、朝起きたら私達3人とも動かなくなってるってことだよね?」
二人はキョトンとした顔で目をパチパチさせながら顔を見合わせる。
やっぱりそこまで考えてなかったんだね...。
ほとんど同時にハッと何かに気づいたように両手をポンと叩く。
「アハハ。たしかにそうなの!ま、まあでも仕方ないの!」
「ん。し、仕方ない。もう戻れない。」
「はあ...。」
遠い目をしながら王都にいるジョンさん達の方角を見つめる。
ジョンさん本当にごめんね。
無事帰れたら二人にはちゃんと謝らせるからね...。
王都をでて漆黒の大迷宮に向かう。
シィーに補助魔法をかけてもらって、月明かりに照らされた暗がりの草原を休憩しながら2時間ぐらい走ると遠くに建物らしき巨大な影が見えてくる。
「見えてきた。あれが漆黒の大迷宮。」
「じゃあ急がないとね。」
「ん!」
近づいていくにつれて巨大な影の全体の外観がだんだんハッキリと見えてくる。
「えっ...。」
おもわず足を止めて遺跡を眺める。
心臓が激しく鼓動する。
── どうしてこれがここにあるの?
「チカ...?急にどうしたの?」
草原の中に不自然に建てられた見覚えのある古代の遺跡。
静寂の中で、遺跡が月明かりに照らされて不気味な雰囲気を漂わせていた
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