光の扉を抜けると、そこにはまるで天国のような光景が広がっていた。
樹々の隙間から木漏れ日が降り注ぎ、花々が辺り一面に咲き誇る。小川のせせらぎと小鳥達の囀る声が響き渡り、涼風がチカの頬を優しく撫でる。
「ここが妖精の里......」
幻想的な光景に感動しながら周囲を見渡していると、小川の方から可愛らしい妖精達が、まるで天使のような笑顔を浮かべて、私に近づいてきた。
「わっ! チビ人間がなんで妖精の里にいるのっ!!」
「クソ人間めっ!! 汚らわしいっ!! さっさと出ていくのっ!」
「............」
──訂正します。クソ生意気な妖精達が、悪魔のような笑顔を浮かべて私に悪態をついてきました。
「ぷっ! あははっ! チカ、なんて顔してるのっ!!」
「笑い事じゃないよっ! せっかく感動してたのに、こいつらのせいで全部ぶち壊しだよっ!!」
チカとシィーの声に気づいて、寝ていたメリィがゆっくりと目を覚ました。
「んー......。あ、あれ?」
「あっメリィ起きたの?」
「こ、ここはどこ?」
「妖精の里なのっ!!」
「えっ!?」
メリィちゃんは、よほど動揺しているのか、語尾のニャを忘れちゃってるみたいだ。
「な、な......」
シィーの言葉をきいて、メリィは目を大きく見開くと、口をパクパクさせて、うまく言葉を出せずにいた。
シィーとチカは、メリィの意外な反応におもわず首をかしげた。
──メリィちゃん感動して言葉がうまく出せないのかな?
チカが楽観的なことを考えていた、次の瞬間。メリィは顔を真っ赤にして叫ぶように口を開いた。もう語尾を気にしている余裕すらない。
『なんてことしてくれたの!?』
「「えっ!?」」
『えっ? じゃないよっ!! これじゃ脱獄じゃないっ!!』
「で、でもメリィも加護の話をしてたときは、ノリノリで話してたのっ!」
『私いったよねっ!? 逃げるべきじゃないって!!』
「「............」」
──加護のことで頭がいっぱいになっちゃって、つい聞き流しちゃったけど、そういえば言ってたかもしれない。いや、言ってたね......。
そっと横目でシィーに視線を送ると、シィーも心当たりがあるのか、メリィちゃんの迫力に圧倒されて、顔を強張らせながら息を呑み込むと、目をキョロキョロと泳がせてひどく動揺している。
『ちょっとっ!! 2人とも聞いてるの!?」
「「はいっ!」」
チカとシィーが、メリィの迫力に押されてオドオドしていると、何処からともなく澄み切った美しい声が聞こえてきた。
「騒がしいですね。人間如きが妖精の里でいったい何をしているのですか?」
怒りを含んだ氷のように冷たい口調に、チカとメリィの背筋に冷たいものが走り、その場に凍りついた。
「ティターニア様っ!! 久しぶりなのっ!」
「あら? シィーちゃんじゃないっ! 久しぶりねえー! 元気そうで安心したわぁ。──でもどうして人間なんかと一緒にいるの?」
ティターニアがシィーに気がつくと、先程までのピリピリとした冷たい雰囲気が、まるで嘘だったかのように、ほんわかした優しい雰囲気に包まれた。
──ふぅー。怖かったあああっ!! でもこれでメリィちゃんの件も、うやむやにできそうだ♪ ラッキー♪
チカはメリィのお説教を回避できたことに、安堵してホッと胸を撫で下ろした。
◆◇◆◇
シィーに案内されて森の奥へと進んでいくと、巨大な大樹が視界に飛び込んできた。
一体どのくらいの年月を過ごせばここまで大きくなるんだろう。きっと何百年じゃきかないよね?
「これが世界樹イグドラシル......」
チカが大樹を見上げながらそう呟くと、シィーが眉を顰めて、チカの方へ振り向いた。
「勝手に名前つけるんじゃねえのっ!!」
「えっ!? 違うの?」
「全然違うのっ!! そもそもなんで大樹に名前なんて必要なの?」
「いや、そう言われるとその通りなんだけど......。でもほら! 妖精の里にある大樹だし、特別だったりするのかなーって」
『キャハハっ! シィー様が連れてきたチビ人間バカっぽくておもしろの!』
「なっ! よ、妖精ちゃん達? 私はバカじゃないからね? そういう事はいっちゃダメだよ?」
「はあー......。お願いだから、チカはすこし大人しくしててほしいの。私まで恥ずかしくなってくるの」
「ひどくないっ!?」
◆◇◆◇
大樹の根本までくると、まるで口を開いてるかのような大きな空洞が、大樹の中へと続いていた。
なんとも独特な木のニオイが漂う中、しばらく薄暗い大樹の中を奥へ奥へと進んでいくと、遠くのほうに明かりが見えてきた。
「ここが妖精の里なのっ!!」
大樹の中には幻想的な空間が広がっていた。
至るところにある苔が淡い光を発して、辺りを照らし、可愛らしい小さな家が上空からたくさん吊るされている。
「わぁー。大樹の中は意外に明るいんだね」
「凄く綺麗なところなのニャっ!」
「ふふふっ! じゃあまずはティターニア様に挨拶に行くからついて来てほしいのっ!」
シィーの後に続いて歩きながら、周囲を観察していると、チカはあることに気がついた。
「ねえシィー、なんで妖精がいないの?」
「本当だニャっ! 家はこんなにたくさんあるのにどこにも妖精がいないニャっ!」
「そりゃそうなの。人間が妖精の里にくるなんて数百年ぶりなの」
「家の中にいるってこと?」
「そういうことなの。ティターニア様から人間の愚かさや浅ましさは嫌っていうほど聞いてるし、当たり前の行動なの」
それ相当な人間嫌いだよね? シィーは大丈夫って言ってたけど、ティターニア様に会うのが怖くなってきたなあ......。
「ついたのっ! ここがティターニア様がいる妖精城なのっ!」
「本当に大丈夫かなー......」
「きっと大丈夫なのっ! せいぜいカエルにされるくらいなのっ!」
「ニャっ!?」
「それ全然大丈夫じゃないからねっ!?」
「ぷぷっ! あはははっ! ちょっと冗談を言ってみただけなのに、2人ともビビりすぎなの! ──あっ、でもメリィは本当に気をつけたほうがいいかもしれないの。私と契約してるのはチカだけだから、ティターニア様がメリィを見て、どういう反応をするのかちょっと予想できないの!」
「えっ?」
シィーの話を聞いたメリィちゃんは、泣きそうな顔で私の顔を見つめたかと思うと、ギュッと私の腕に抱きついてきた。
「チカ、お願いだから私を守ってほしいニャ......。ぐすっ。カエルになんかなりたくないニャ」
「だ、大丈夫だよっ!」
やっぱり姉妹だけあって、怯え方がマリーちゃんとそっくりだなぁ。──ってそんなこと考えてる場合じゃないねっ! メリィちゃんは私が守らなきゃっ!!
「さ、さあ! じゃあそろそろティターニア様のところへ行くのっ! メリィは私が守るから安心して欲しいの!」
「ぐすっ。ありがとニャ。シィーちゃんは優しいニャ......」
「あはは......。あ、当たり前のことを言っただけなのっ! メリィは私の大事な友達なの!」
──や、やりすぎちゃったの。いまさら冗談でしたっなんて言える雰囲気じゃねえの......。
シィーは顔を青くして薄ら笑いを浮かべながら、妖精城の扉を開いていった。
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