女神様から加護をもらったので、猫耳パーカーを着て楽しく生きていきます!

🌟彼女は絶対に諦めたりしなかった。🌟
よもぎ餅
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第三章 少女と妖精の里

第65話 妖精の里

公開日時: 2020年10月4日(日) 00:00
更新日時: 2020年10月27日(火) 22:33
文字数:2,867

 光の扉を抜けると、そこにはまるで天国のような光景が広がっていた。


 樹々の隙間から木漏れ日が降り注ぎ、花々が辺り一面に咲き誇る。小川のせせらぎと小鳥達の囀る声が響き渡り、涼風がチカの頬を優しく撫でる。


「ここが妖精の里......」


 幻想的な光景に感動しながら周囲を見渡していると、小川の方から可愛らしい妖精達が、まるで天使のような笑顔を浮かべて、私に近づいてきた。


「わっ! チビ人間がなんで妖精の里にいるのっ!!」

「クソ人間めっ!! 汚らわしいっ!! さっさと出ていくのっ!」


「............」



 ──訂正します。クソ生意気な妖精達が、悪魔のような笑顔を浮かべて私に悪態をついてきました。


「ぷっ! あははっ! チカ、なんて顔してるのっ!!」

「笑い事じゃないよっ! せっかく感動してたのに、こいつらのせいで全部ぶち壊しだよっ!!」


 チカとシィーの声に気づいて、寝ていたメリィがゆっくりと目を覚ました。


「んー......。あ、あれ?」

「あっメリィ起きたの?」

「こ、ここはどこ?」

「妖精の里なのっ!!」

「えっ!?」


 メリィちゃんは、よほど動揺しているのか、語尾のニャを忘れちゃってるみたいだ。


「な、な......」


 シィーの言葉をきいて、メリィは目を大きく見開くと、口をパクパクさせて、うまく言葉を出せずにいた。


 シィーとチカは、メリィの意外な反応におもわず首をかしげた。


 ──メリィちゃん感動して言葉がうまく出せないのかな? 


 チカが楽観的なことを考えていた、次の瞬間。メリィは顔を真っ赤にして叫ぶように口を開いた。もう語尾を気にしている余裕すらない。


『なんてことしてくれたの!?』


「「えっ!?」」


『えっ? じゃないよっ!! これじゃ脱獄じゃないっ!!』


「で、でもメリィも加護の話をしてたときは、ノリノリで話してたのっ!」


『私いったよねっ!? 逃げるべきじゃないって!!』


「「............」」



 ──加護のことで頭がいっぱいになっちゃって、つい聞き流しちゃったけど、そういえば言ってたかもしれない。いや、言ってたね......。


 そっと横目でシィーに視線を送ると、シィーも心当たりがあるのか、メリィちゃんの迫力に圧倒されて、顔を強張らせながら息を呑み込むと、目をキョロキョロと泳がせてひどく動揺している。


『ちょっとっ!! 2人とも聞いてるの!?」


「「はいっ!」」


 チカとシィーが、メリィの迫力に押されてオドオドしていると、何処からともなく澄み切った美しい声が聞こえてきた。


「騒がしいですね。人間如きが妖精の里でいったい何をしているのですか?」


 怒りを含んだ氷のように冷たい口調に、チカとメリィの背筋に冷たいものが走り、その場に凍りついた。



「ティターニア様っ!! 久しぶりなのっ!」


「あら? シィーちゃんじゃないっ! 久しぶりねえー! 元気そうで安心したわぁ。──でもどうして人間なんかと一緒にいるの?」


 ティターニアがシィーに気がつくと、先程までのピリピリとした冷たい雰囲気が、まるで嘘だったかのように、ほんわかした優しい雰囲気に包まれた。


 ──ふぅー。怖かったあああっ!! でもこれでメリィちゃんの件も、うやむやにできそうだ♪ ラッキー♪


 チカはメリィのお説教を回避できたことに、安堵してホッと胸を撫で下ろした。



 ◆◇◆◇


 シィーに案内されて森の奥へと進んでいくと、巨大な大樹が視界に飛び込んできた。


 一体どのくらいの年月を過ごせばここまで大きくなるんだろう。きっと何百年じゃきかないよね?


「これが世界樹イグドラシル......」


 チカが大樹を見上げながらそう呟くと、シィーが眉を顰めて、チカの方へ振り向いた。


「勝手に名前つけるんじゃねえのっ!!」

「えっ!? 違うの?」

「全然違うのっ!! そもそもなんで大樹に名前なんて必要なの?」

「いや、そう言われるとその通りなんだけど......。でもほら! 妖精の里にある大樹だし、特別だったりするのかなーって」


『キャハハっ! シィー様が連れてきたチビ人間バカっぽくておもしろの!』


「なっ! よ、妖精ちゃん達? 私はバカじゃないからね? そういう事はいっちゃダメだよ?」


「はあー......。お願いだから、チカはすこし大人しくしててほしいの。私まで恥ずかしくなってくるの」


「ひどくないっ!?」



 ◆◇◆◇


 大樹の根本までくると、まるで口を開いてるかのような大きな空洞が、大樹の中へと続いていた。


 なんとも独特な木のニオイが漂う中、しばらく薄暗い大樹の中を奥へ奥へと進んでいくと、遠くのほうに明かりが見えてきた。


「ここが妖精の里なのっ!!」


 大樹の中には幻想的な空間が広がっていた。

 至るところにあるこけが淡い光を発して、辺りを照らし、可愛らしい小さな家が上空からたくさん吊るされている。


「わぁー。大樹の中は意外に明るいんだね」

「凄く綺麗なところなのニャっ!」

「ふふふっ! じゃあまずはティターニア様に挨拶に行くからついて来てほしいのっ!」



 シィーの後に続いて歩きながら、周囲を観察していると、チカはあることに気がついた。


「ねえシィー、なんで妖精がいないの?」

「本当だニャっ! 家はこんなにたくさんあるのにどこにも妖精がいないニャっ!」

「そりゃそうなの。人間が妖精の里にくるなんて数百年ぶりなの」

「家の中にいるってこと?」

「そういうことなの。ティターニア様から人間の愚かさや浅ましさは嫌っていうほど聞いてるし、当たり前の行動なの」


 それ相当な人間嫌いだよね? シィーは大丈夫って言ってたけど、ティターニア様に会うのが怖くなってきたなあ......。


「ついたのっ! ここがティターニア様がいる妖精城なのっ!」

「本当に大丈夫かなー......」

「きっと大丈夫なのっ! せいぜいカエルにされるくらいなのっ!」


「ニャっ!?」

「それ全然大丈夫じゃないからねっ!?」


「ぷぷっ! あはははっ! ちょっと冗談を言ってみただけなのに、2人ともビビりすぎなの! ──あっ、でもメリィは本当に気をつけたほうがいいかもしれないの。私と契約してるのはチカだけだから、ティターニア様がメリィを見て、どういう反応をするのかちょっと予想できないの!」


「えっ?」


 シィーの話を聞いたメリィちゃんは、泣きそうな顔で私の顔を見つめたかと思うと、ギュッと私の腕に抱きついてきた。


「チカ、お願いだから私を守ってほしいニャ......。ぐすっ。カエルになんかなりたくないニャ」


「だ、大丈夫だよっ!」


 やっぱり姉妹だけあって、怯え方がマリーちゃんとそっくりだなぁ。──ってそんなこと考えてる場合じゃないねっ! メリィちゃんは私が守らなきゃっ!!


「さ、さあ! じゃあそろそろティターニア様のところへ行くのっ! メリィは私が守るから安心して欲しいの!」

「ぐすっ。ありがとニャ。シィーちゃんは優しいニャ......」

「あはは......。あ、当たり前のことを言っただけなのっ! メリィは私の大事な友達なの!」



 ──や、やりすぎちゃったの。いまさら冗談でしたっなんて言える雰囲気じゃねえの......。


 シィーは顔を青くして薄ら笑いを浮かべながら、妖精城の扉を開いていった。


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